[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2018/10/18
抄訳記事公開日:
2018/12/20

温室効果ガスを有用製品に転換することで排気ガスを削減できる可能性がある「炭素利用」技術

Carbon Utilization’ Technologies Could Reduce Emissions byTurning Greenhouse Gases Into Useful Products

本文:

10月18日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。

NASEMは、温室効果ガス排出量を削減させる炭素利用技術の研究開発に関する新たな報告書を公表した。同報告書では、化石燃料を燃やすことで生じる温室効果ガスを、燃料、建材、化学品などの有用製品に転換する技術の商業的実用可能性を改善させるための研究課題について概説している。報告書は、米国政府と民間部門が、研究開発を支援してこれらの技術を進歩させ、その取り組みを調整するよう求めている。

温室効果ガスの排出削減に関するこれまでの評価では、特定の技術的進歩が達成されれば、年間約36億トンの二酸化炭素(現在の世界中の二酸化炭素排出量の10%以上)を今後数十年以内に有効利用できると結論づけられている。鉱物化(mineralization)という技術は、二酸化炭素をコンクリートやセメントの製造に使用できる鉱物炭酸塩に変換することができる。これらの建材は大規模に使用され、数十年の製品寿命を有しているため、鉱物化技術は長期的な炭素貯蔵と利用という意味で重要である。これ以外に、二酸化炭素とメタンを燃料、ポリマー、化学品に変換する化学的・生物学的プロセスを利用する技術もある。

本報告書では、これらの技術を推進するための包括的な研究課題を提供している。例えば、既存の二酸化炭素捕捉技術と鉱物化プロセスを統合してプロセスの効率と能力を高める研究や、二酸化炭素とメタンの反応の高速化・効率化を促進する化学的・生物学的プロセスの理解に関する研究である。本報告書はまた、炭素利用を可能にする技術開発を推奨している。例えば、炭素・メタン排ガスには、窒素酸化物等の汚染物質が含まれており、ガスの利用を妨げる可能性がある。従って、炭素を利用するためには、使用可能な廃ガスから汚染物質を分離する費用対効果の高い方法を見つけることが重要である。

これらの研究開発を進める上で、米国政府と民間部門が協調し、研究開発プログラム間で調整がなされれば、より急速な進歩をもたらす可能性がある、と報告書は述べている。さらに、連邦科学機関は、これらの研究開発の国際的な調整も行うべきであると述べている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]