[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国家科学技術会議(NSTC)
元記事公開日:
2018/11/16
抄訳記事公開日:
2019/01/24

国家科学技術会議が海洋科学技術の10年ビジョンを策定

Science and Technology for America’s Oceans: A Decadal Vision

本文:

国家科学技術会議(NSTC)の環境委員会・海洋科学技術小委員会は「米国の海洋のための科学技術:10年ビジョン(SCIENCE AND TECHNOLOGY FOR
AMERICA’S OCEANS: A DECADAL VISION)」(2018年11月)を策定した。本文書は、第2次の米国海洋科学技術10年計画であり、2007年に策定され2013年に改定された「次の10年の米国の海洋科学の進路を示す:海洋研究優先度計画と実行戦略」に次ぐものである。本文書の概要は以下のとおりである。

大西洋、太平洋、メキシコ湾、河川、五大湖および北極域への米国の自由なアクセスは、国内およびグローバルの貿易に力を与えるものである。米国の沿岸を超えて貨物や人の移動を容易にすることは、国家の競争優位を促進し、貿易を進展させ、資本を生み出し、国内経済を前進させるとともに、米国の強さを海外に示し、国益を守るものである。同様に、海洋における生物の多様性と生産性は、沿岸地域社会の健全性を維持し、活力ある国家経済を促進する。海洋は地球システムにおいても基本的な役割を果たしている。科学技術のブレークスルーにより責任ある海洋の管理を確保することは、基盤となる基礎研究に支えられた、連邦政府の戦略的なポートフォリオに依存する。本文書は2018年から2028年までの10年間の海洋科学技術の活動における差し迫った研究のニーズと可能性のある分野を明らかにするものである。

このビジョンは、今後10年間に米国の海洋科学技術と国家を前進させるために、以下の5つの目標を設定している。個々の目標は、具体的な目的とそれらを達成するための実施可能な優先事項により補完される。

目標1:地球システムにおける海洋を理解する
1)研究開発のインフラの近代化
2)ビッグデータの活用
3)地球システムのモデルの開発
4)研究から運用への展開の促進

目標2:経済的繁栄を促進する
1)国内の海産物生産の拡大
2)潜在的なエネルギー源の探索
3)海洋の希少鉱物の評価
4)経済的利益と生態学的利益のバランス
5)海洋に携わる人材の育成

目標3:海事の安全を確保する
1)海事の状況認識の向上
2)変化する北極域の理解
3)海上交通の確保と発展

目標4:人間の健康を守る
1)プラスチック汚染の防止と削減
2)海洋の汚染物質と病原体の予測の向上
3)有害な藻類ブルームとの闘い
4)天然物の発見

目標5:回復力のある沿岸地域社会を発展させる
1)自然災害と気象事象への備え
2)リスクと脆弱性の低減
3)地域の意思決定の強化

喫緊の海洋研究・技術の有望分野には以下のものが含まれる。
1 ビッグデータのアプローチを地球システム科学に十分に組み込む
2 監視と予測モデルの能力を発展させる
3 意思決定支援ツールにおけるデータ統合を向上させる
4 海洋の探索と特性評価を支援する
5 現行の研究・技術に関するパートナーシップを支援する

5つの目標のそれぞれに関連する2つの横断的なテーマは、海洋関係インフラの近代化および管理と、教育を受けた多様で活動的な海洋関係人材の育成である。これらの2つの分野への継続的な投資は、海洋科学技術における米国のグローバルなリーダーシップに貢献する。

この文書は、米国の安全保障と繁栄を促進するとともに、海洋の環境を現在および将来の世代のために保全する、革新的で協働的な海洋科学技術活動のための10年間のビジョンを提示するものである。研究目標の達成には、政府、民間企業、学界、非政府機関のあらゆるレベルにおいて、長期的な海洋科学技術への投資と調整を必要とする。これらの目標は、連邦および非連邦のパートナーと必要なリソースを方向付け、効果的に活用することによって、年月をかけて達成される。さらに、この文書は連邦省庁に対して、海洋科学技術の優先事項に関する重要なガイダンスを与えるものであるが、本計画の実施は利用可能なリソースに依存するものであり、年度ごとに異なることになる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]