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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2018/12/04
- 抄訳記事公開日:
- 2019/02/22
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暗号技術を打ち破る量子コンピュータは今後10年間は実現しないとNASEMが報告
- 本文:
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12月4日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。
NASEMは、量子コンピューティング分野を調査し、最先端技術の最新状況、そして汎用量子コンピュータに向けて期待される進歩、およびその開発がもたらす副次的な影響について明確にするための委員会を設置し、関係の報告書を取りまとめた。
同報告書では、量子コンピューティングの現状と克服すべき重大な課題を考慮すると、公開鍵暗号を突破できるような量子コンピュータが、今後10年以内に開発される可能性は極めて低いが、既存のインターネットプロトコルの置換には一般的に10年以上を要するため、量子コンピュータによる攻撃に対して耐えられるアルゴリズムを開発、実装することが極めて重要である、と述べている。
本報告書では、量子コンピューティングの利点と制約の両方を説明しながら、その動作方法について説明している。量子コンピュータは全てのコンピューティングを向上させることができるわけではなく、動作においても既存の技術を必要としている、従って、既存のコンピュータを完全に代替する可能性は低く、むしろ、それらは既存のコンピュータに接続してアクセラレータとして使用される可能性が高い。
この報告書ではまた、新たなアルゴリズム、ソフトウェア、制御技術、およびハードウェア概念の構築という分野での今後の重要課題が提示されている。課題の1つは、量子システム内のエラー修正の必要性であり、これができなければ、高度で複雑な量子プログラムがシステム上で正しく実行される可能性はほとんどない。もう1つの課題は、量子コンピュータは大量のデータを少ない量子ビットで表現できるが、大量の古典的データを迅速に量子状態に変換する方法が現時点では存在しないことである。データを量子コンピュータに効率的に転送するための新しい方法が開発されない限り、スピードアップの見込みは薄い。
本報告書の重要な発見の1つは、実用的な量子コンピュータの実現を予測するには時期尚早であるということである。さらに、量子コンピューティングに関する現在の研究は、国家安全保障に明らかな影響を及ぼしている、と報告書は述べている。米国はこれまで量子技術の開発において歴史的に主導的な役割を果たしてきたが、量子情報科学技術は今や全世界に拡がっており、他の多くの国がそのリソースを投入することを約束している。もし米国がその主導的地位を維持したいのであれば、この分野への継続的な支援は不可欠である。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]