[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
公衆衛生庁
元記事公開日:
2019/01/04
抄訳記事公開日:
2019/03/22

ラッサ熱発生時の対応に役立った革新的なゲノミクス・ツール

Innovative genomics tool guides response to Lassa fever outbreak

本文:

2019年1月4日付英国公衆衛生庁(PHE)の標記発表の概要は以下のとおり。

ラッサ熱流行中に初めて、科学者らは迅速で携帯可能なゲノム配列特定技術を活用して、病気の原因に関する予備知識なしにウイルスを同定することができた。これにより、研究者らは、恐怖心が和らげられ、ウイルスの拡散が制限するための公衆衛生上の介入を指示し、より多くの人々を病気から守れることになった。

2018年のナイジェリアでのラッサ熱流行期間に行われたこの研究は、PHE(英国)、ベルンハルトノット熱帯医学研究所(BNITM)(ドイツ)、イルア専門教育病院(ISTH)(ナイジェリア)の科学者らによって、ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)および世界保健機関(WHO)との協力の下に行われた。ラッサ熱は、感染したラットの尿や便によって運ばれるウイルスによって引き起こされる。 このウイルスは、発熱、脱力感、筋肉痛、発作を引き起こし、高い頻度で致命的である。

症例数が増加した理由を的確に把握するべく、NCDCはWHOと共同でウイルスの感染能力が高まったかどうかを把握するために、研究チームに患者検体の分析を依頼した。ナイジェリアのイルアにあるISTHに勤務するチームは、Oxford Nanopore Technology社の携帯機器を使用して、120件のウイルスサンプルの遺伝子コードを迅速に解析した。従来この分野で使用されているゲノム解析では、研究者は一度に1つの遺伝子マーカー又はウイルス株しか調べることができなかった。しかし今回は、DNAシーケンスと組み合わせてメタゲノム解析と呼ばれる異なる方法を採用した。これにより、研究チームは多様性が高いとして知られるラッサウイルス・ゲノムの複数の多様なバリエーションをテストすることができた。その結果、この集団発生で病気を引き起こす原因となった菌株の特定プロセスがスピードアップされた。

上記方法は、特定の時点におけるウイルス集団全体の遺伝物質に対する識見を与える。研究者らは、サンプル中の株がすべて密接に関連しているわけではないことを発見した。これは、その後人から人へと広がる単一のウイルス源がなかったことを示唆している。一方で、げっ歯類からの複数の異なる感染例を示唆する、多様な菌株が多数存在した。

[DW編集局]