[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国家情報長官室(ODNI)
元記事公開日:
2019/01/29
抄訳記事公開日:
2019/03/27

国家情報長官(DNI)が「世界規模の脅威に関する評価報告」を発表

WORLDWIDE THREAT ASSESSMENT

本文:

2019年1月29日付の米国国家情報長官(DNI)室による報道発表によれば、ダニエル・コーツ(Daniel R. Coats)長官は同日、「世界規模の脅威に関する評価報告」を発表し、米国が直面している最も重大な安全保障上の世界的脅威を概説した。ここではその報告の中から「新たな破壊的技術と経済競争力に対する脅威」に関する部分を抜粋・要約して以下に記す。

2019年以降、科学技術における米国の全体的な優位が縮小するにつれて、軍事的・経済的競争力を推進するイノベーションは米国外で創出されることが多くなる。商業技術と軍事技術の間の能力格差がなくなり、米国外の当事者は、合法的・非合法的な手段によって、最高の人材、企業、データ、知的財産を獲得するための取り組みを強めている。中国の習近平主席やロシアのプーチン大統領を含む多くの外国指導者たちは、自国の強力な科学技術力が国家の主権、経済的展望、国力の鍵と見なしている。

過去20年間において、科学技術分野における米国の優位が大きく侵食されてきた。中国による侵食が最も顕著で、欧米の雑誌の分析によると中国は複数の領域でかなり先んじている。しかし米国は、世界の科学技術発表論文の約3分の1を占める医学では最先端にあり、全体として大きな優位を維持している。

  • 人工知能と自律機能
    人工知能(AI)(人間の認識の側面を模倣するシステム)を開発する世界的な競争は、国家安全保障上の意味合いを持ち、高機能で特定用途向けのAIシステムの開発を加速させる可能性がある。学界、大手企業、大規模な政府プログラムがAI能力の開発・展開を続けているため、自律性と意思決定のレベルが向上するのに伴い、AIで機能を強化したシステムは信頼される可能性がある。そのことが世界に経済的、軍事的、倫理的、プライバシー上の各種課題を提示する。さらに、複数の高度なAIシステム間の相互作用は、経済的な判断ミスや戦場での奇襲のリスクを高める予期せぬ結果を招く可能性がある。
  • 情報・通信
    第5世代(5G)無線ネットワークなどの先進的な通信技術の米国外での生産と採用は、米国の競争力とデータセキュリティに挑戦する可能性が高い。一方、量子コンピューティングの進歩は、データ・取引の現行の保護方法に対する挑戦を予示している。米国のデータが、外国で製造された機器や外国で管理されているネットワークを介してますます流通することで、外国からのアクセスやサービス妨害のリスクが高まる。今後10年余りの間に、大規模な量子コンピュータが米国外に配備されると、今日最も広く使用されているアルゴリズムで暗号化された機密情報の、暗号解読リスクが大幅に増大する。
  • バイオテクノロジー
    遺伝子編集、合成生物学、神経科学を含むバイオテクノロジーの急速な進歩は、各国政府が後れを取らないよう懸命に取り組んでいる中で、世界的に新たな経済的、軍事的、倫理的、規制上の課題を提示する可能性がある。これらの技術は精密医療、農業、製造の進歩に大きな期待を抱かせるものであるが、それらはまた敵対者が新規の生物兵器を開発し、食料安全保障を脅かし、人間の能力を強化又は低下させる可能性といったリスクをもたらす。
  • 材料と製造技術
    材料科学と製造技術の世界的な復活は、先進諸国に対して、新しい特性を持つ材料の開発やこれまで不可能であった構造の設計を可能にし、一方で高度な製造能力を小グループや個人でも手の届くところに保持することができる。これらの開発は、複雑なロケットエンジン部品からデスクトップ印刷されたプラスチック製玩具まで、製造のほとんどの分野で従来の方法を既に補完または置き換えている。また、複雑な形状の異なる材料を組み合わせて、全体的な材料特性を変える新世代の人工材料の開発を可能にしている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]