[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2019/01/18
抄訳記事公開日:
2019/03/28

ドイツ南極基地ノイマイヤーIIIの10周年

10 Jahre Neumayer-Station III

本文:

このほどノイマイヤー基地III隊員はアカデミアおよび政界の代表団と共に基地設置10周年を祝った。これに関してドイツ連邦教育研究省(BMBF)は概略下記のような報道発表を行った。

南極は氷に閉ざされた、南極圏の彼方の大陸である。ヘルムホルツ極地海洋研究センターのアルフレッド・ウェゲナー研究所(AWI:Alfred-Wegener-Institute)は、極限環境下で、年間を通じて人が住み、活動する研究基地を維持している。2009年からノイマイヤー基地III は東ウエッデル海の沿岸のエクストローム氷棚上でドイツ南極研究の基地として活動している。

10年前から同基地は南極におけるドイツおよび国際的な研究プロジェクトを可能にしてきた。先行する二つの基地から数キロメートルしか離れていないところで二夏を掛けて建設され、2009年初頭に完成した。周辺では、1980年から独自の観測が行われている。同時に毎年新たな研究問題が加わっている。また同基地は南極内陸部の調査の起点となっており、それにはAWIのキャタピラー車および極地研究飛行機が利用されている。

AWI所長のビュティウス(Boetius)教授は、「南極大陸は地球最大の氷量を保持し、南極海は著しい量のCO2や熱を吸収している、従ってこの地域の研究は非常に重要である。グローバルな気候変動を理解するため、同基地で長期にわたりデータを収集している。分刻みの気象観測から、ボーリングによる気候の歴史研究に至る。加えて南極の生物の多様性、ペンギンのコロニー、厚い氷棚下の冷水珊瑚等の観察を支援している」と強調した。

気象観測では、気球によってゾンデを飛ばし、気温、湿度、気圧、風、大気中のオゾンの拡散等を計測している。その他の重点としては、空気の化学組成、地球の磁場、海洋氷、皇帝ペンギンのコロニーの研究がある。2017年から同基地ではドイツ航空宇宙センター(DLR)がリーダーとなってEDEN-ISS温室をテストしている。これは宇宙や気候的に不利な地域で作物を育てるための新たな方法を生み出すことを目的としている。今年の冬、越冬隊は初めて定期的に新鮮なサラダを食べることができた。また連邦地質資源研究所が世界に60ヶ所ある超低周波音基地の一つを運営している。同じくドイツ気象庁(DWD)も同基地に駐在しており、その予報によって基地外での安全な活動を可能にしている。ロシア、ノルウェー、南アフリカ等の国際的なパートナーに対しても航空気象予報によるアドバイスをしている。

現在マイスターBMBF政務次官の率いる14名の査察団が、査察訪問中である。

マイスター次官は、「極地研究の必要性および重要性をここ数日で確信する。地球の気候およびそのを変動よりよく理解し、そこから行動指針を導き出すために、我々は極地のプロセスに関する深い知識を必要としている。こうした科学的知見は持続的な政治的決定にとって本質的な条件である」と強調した。

ヘルムホルツ協会ヴィーストラー会長は、「南極における長期にわたるノイマイヤー基地IIIの研究は感銘深い。この基地がもたらす数多くの卓越した可能性は、気候・気象研究、宇宙研究、生物学、地学その他数多くの科学的専門分野に恩恵をもたらしている。これらすべてが、我々の生活基盤を保護し、改善することに寄与している。この優れた研究基地における活動を今実際に体験できることを喜びとするものである」と語った。

[DW編集局]