[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)
元記事公開日:
2019/01/17
抄訳記事公開日:
2019/03/29

学生起業を奨励するPEPITE計画の評価報告

La formation de l'esprit entrepreneur. Évaluation du plan PEPITE en faveur de l'entrepreneuriat étudiant. Recommandations pour un passage à l'échelle

本文:

2019年1月17日付で高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)は標記報告書を公表した。報告書の概要は以下のとおり。

● 2013年に始まったPEPITE計画の目指すところは次の4つの目標に要約される。

  • 地域ごとのグループ化によって支援される「イノベーション、技術移転、起業のための学生拠点」(PEPITE)の創設を通じて、地域のすべての高等教育機関の参画を図る。
  • すべての学生に起業家精神を実感させる。
  • 起業プロジェクトを展開している学生又は卒業生に特別の資格、国家認証の学生起業家資格、およびそれに適応する支援を提供する。
  • 国家PEPITE賞の創設により起業を促進する。

● 起業家精神は、第3次産業革命の文脈において企業の実存的条件となった。次の3つの傾向に集約される。

  • 第1に、企業は生き残るために絶えずイノベーションを求める必要があること。
  • 第2の傾向は、意味の探求と高い柔軟性に基づいた、新しい世代と仕事との関係である。企業が雇用を提供し社員に従属と専属を求める従来の図式の社会から、才能ある若者が彼らの能力を複数の企業に期間限定で貸し出す図式の社会へと転換しつつあること。そこでは雇用の重心は企業になく個とその能力にあること
  • 第3の傾向は、企業と人材との関係を変えるデジタル・プラットフォームの展開である。

● PEPITE構想の検証

高等教育機関の全国カバー率は、海外県を含むフランス全土に30のPEPITEが存在することによって確保されている。国家認証学生起業家としての地位が確立されたことで、ますます多くの学生が自分たちの研究や起業プロジェクトを実施するに当たり、各施設から恩恵を受けている。しかし、起業だけがPEPITEの唯一の目的ではないので、この基準だけで施策を評価しないように注意する必要がある。雇用主は起業家の能力を持った学生のプロフィールにますます関心を示している。

広報活動、意識啓発、専門研修は、ますます多くの学生に届いている。これらは起業とイノベーションに備えるための特定の卒業資格に付加するものである。2018年には合計で12万人以上の学生がこれらの施策の恩恵を受けている。

PEPITEはしばしば、その地域の起業エコシステムの当事者を動員することに成功している。これにより、特に地方自治体からPEPITE運営に対する多大な財政的貢献がもたらされている。元学生起業家も動員され、PEPITEが提供する啓発活動や支援活動に参加している。この動員は、大学が特に学生による起業への関心を高めているという文脈の中で行われている。

しかし、この国家的施策の弱点が発展を阻害している。計画実行のための政策の不十分さにより、そのガバナンスは行政運営に近く、起業エコシステムのパートナーが除外されていて弱体である。国家認証学生起業家の地位は大学のサービスによって必ずしも周知されているわけではなく、学生起業家の学位は全国職業資格認定委員会(CNCP)の名簿に登録されていないために、認知されていない。

PEPITEに対する意識は、学生、研究・教育者、企業の間では依然として低く、すべての学生の意識啓発を一般化するという目標の達成は程遠い状況である。

政府の資金支援は計画の目標には達していない。PEPITEの資本を構成する人的資源は、不安定な雇用と高い離職率により脆弱である。

国家PEPITE賞の実施は、特に地域レベルとの関連においては最適ではない。

● 今後に向けての提言

PEPITE施策は、今後(i)起業家精神の意識啓発およびプロジェクトを担う学生への支援の拡大を図る必要がある。(ii) 国土全体で同じレベルの効果と条件で関わる必要がある。次の4つのカテゴリーで提言を行う。

  • 政府は、(i)起業家精神の育成に基づく学生起業のビジョン、および(ii)その行動を導く原則を再確認する必要がある。
  • 政府は戦略を策定し、展開のための条件を整備し、施策の管理を運営機関に委ねること。
  • 政策の政治的リーダーシップは、(i)政府および(ii)施設の最高レベルで考慮されるが、それは開放的で機動的なシステムの下でエコシステム・パートナーと連携する。
  • PEPITEは、学生の期待や変化する社会のニーズにより適切に対応するための制度変革促進手段であり、その施策は促進されるべきである。

※日本語「生き甲斐」の引用
本報告書の13ページの「企業の実存的条件としての起業家精神」の下で、仏語の”raison d’être”に対応する日本語として「生き甲斐」が紹介されている。次のように解説されている。
「生き甲斐とは、我々がやりたいこと、得意なこと、世界が必要としていること、そして対価を支払うことができることの交差する部分にある」

[DW編集局+JSTパリ事務所]