[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
元記事公開日:
2019/01/25
抄訳記事公開日:
2019/04/03

科学、研究、イノベーションの未来に関するスキッドモア科学担当大臣の講演

Making science work, together: how can we build the best possible future for science, research and innovation in the UK?

本文:

2019年1月25日付ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の発表では、クリス・スキッドモア(Chris Skidmore)科学担当大臣がカルハム(Culham)で行った標記に関する講演の内容を伝えている。概要は以下のとおり。

● 優先課題

英国の科学と研究には、今後2つの重要な優先課題がある。第1は最も緊急な課題で、英国のEU離脱に際して、英国が欧州の研究プログラムと、さらにはより広範な科学・研究の世界と、良い関係を確保できるようにすることである。第2は科学、研究、イノベーションへの投資を増やし、研究開発を中核に置く経済への道筋を示すことである。

● Brexitと英国研究の今後

EUの枠組みプログラムへの参加は、英国の研究者や革新的な企業にとって不可欠である。それには多くの理由がある。理由の一つは資金である。EUに加盟していることで、英国は毎年10億ポンドの研究開発資金を得ている。英国が成功しているという事実は、英国の卓越性を示す尺度である。それが資金だけの問題ではないことは分かっている。”Horizon 2020″は英国の研究室、大学、企業を欧州全域の研究者につないでいる。また、ERC助成金やマリーキュリー・アクション(Marie Sklodowska-Curie)(MSCA)による助成の重要性も認識している。

英国の研究室や大学にとって、EUを含む海外出身の研究者やスタッフの重要性を認識している。実際、欧州やより広範な世界各地から来た何万人もの研究者に感謝したい。彼らは英国を本拠地にして、自らの才能をここに活かそうとしている。

協定締結によるEU離脱は依然として最優先事項であり、メイ首相は、”Horizon Europe”やユーラトム研究・教育プログラムなど、今後のEUプログラムに関与する選択肢を持ちたいことを明らかにしている。しかし我々は合意無き離脱の場合にも備えている。政府による引受保証により、Brexitの前に提出されたEUのファンディング・プログラムへのすべての申請に対して、採択時の助成金の支払いが保証されている。特に昨年9月に設立され、すでに5,000件の登録がある英国研究・イノベーション機構(UKRI)の助成金登録ポータルの使用など、必要な場合はできるだけスムーズに機能するようにするための措置を講じた。

同時に、我々は世界全体の研究者との関係を引き続き強化する。科学・イノベーションをリードする国々、さらには発展途上国とのパートナーシップにこれまで以上に投資していく。最高のもの同士を団結させる共同プロジェクトは、新産業戦略の下での英国の目標をさらに推進し、世界的課題への対処を可能にする。このような共同事業を支援するために、米国、カナダ、イスラエル、中国などと、政府レベルでのグローバルな戦略的パートナーシップを築く。

● GDPの2.4%目標の実現

もう一つの優先課題は、英国の研究開発の明るい未来をどう確保するかということである。特に、英国の研究開発投資額を2027年までにGDPの2.4%に、そして長期的には3%に増やすための、英国政府の取り組み方について述べる。

2.4%の目標達成自体が目的ではない。それは英国の研究開発にとって新たな局面の始まりであり、科学、工学、技術、芸術、人文科学、社会科学の総合力に基づいて素晴らしい未来を築くための礎石である。

今後数ヶ月のうちに、研究開発にGDPの2.4%を投資するという目標の達成方法に関するロードマップを作成し、公表する予定である。近年発表した70億ポンドの追加資金は、研究開発・イノベーションの公的資金支援における40年間で最大の増加を示している。

今後の検討の指針として、次のような原則がある。

第1は適正な公共投資があること。歳出見直し(Spending Review)の結果を事前に判断するのは時期尚早であるが、当省や国立アカデミーなど他機関による分析では、GDPの2.4%を満たすには英国全土の研究開発に対する公的投資の大幅増が必要であることが示されている。

OECDの統計によると、英国の民に対する官の研究開発の比率は比較的大きい。公的機関が資金支援する公的研究開発費の1ポンドに対して、民間セクターの投資は約2.60ポンドである。これは他の多くの裕福な諸国と比較しても引けを取らない。ドイツとフィンランドよりわずかに大きく、カナダ、フランス、オランダよりもかなり大きいが、アメリカやスイスよりは小さい。

上記について注意すべき重要な点は、官に対する民の投資比率をアメリカやスイスのレベルまで増加させたとしても、公共投資がGDP比で同じレベルにとどまっていれば、2.4%の目標達成にはまだ至らないということである。これは、目標達成には、公共投資の増加がほぼ確実に必要になることを意味する。

公共部門だけでは目標を達成できないことも統計から明らかである。イノベーションや研究開発は、政府、学術界、企業、その他の機関がすべて補完的な役割を果たすエコシステムにおいて起こりうる。企業や慈善団体がイノベーションへの投資を増やした場合にのみ、目標が達成できる。(経済と世界を変革する可能性を秘めた研究を支援する)産業戦略チャレンジ基金や戦略優先基金など、重要でインパクトのある研究の支援を狙った新しい資金源を展開したのはこのためである。

イノベーションへの投資意欲は、研究機関の質、それらの間の関係、そしてそれらを支える文化に接する方法によっても決まる。この意味で、前任者らが計画して設立したUKRIは不可欠である。

[DW編集局]