[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州大学協会(EUA)
元記事公開日:
2019/02/12
抄訳記事公開日:
2019/04/16

EUAがプランSに関する質問への包括的な回答を発表

EUA issues response to Plan S consultation

本文:

2019年2月12日付 欧州大学協会(EUA)の標記発表によると、EUAは、サイエンス・ヨーロッパ(Science Europe)によって開始された「プランS」審議に対する包括的な回答を発表した。EUAは、学術出版物へのオープンアクセスに関する協会の取り組みを補完するものとして、プランSに特別な関心を抱いている。

「プランS実施ガイドライン」に対してEUAが発表したポジション・ペーパーから、その概要を以下に記す。

EUA は、欧州理事会の決定の基礎であるアムステルダム・オープンサイエンス行動要請を承認し、オープンアクセスへの移行に向けて熱心に取り組んでいる。その結果、EUAはすでに「プランS」の目標に対する支持を表明したが、その実現は原則を実践に移す過程にかかっていることを強調している。EU28か国の大学は75万人近くの研究者を擁し(2017)、学術文献へのアクセスに毎年10億ユーロ以上を費やしている。プランSは必然的に大学や大学の研究者に影響を及ぼす。

一般的に、EUAはプランSの原則は支持するが、実装へのアプローチにおいては柔軟性を保つことを提言する。これは、国または機関の方針や様々な実践分野における多様なニーズとの両立を確保するためである。

  • 著作権
    プランSの主な目的は、出版社から著者/研究機関向けに著作権を解放することであるため、著者による著作権の保持に関しては、研究成果の自由な再利用、共有、適応を可能にするライセンスを使用することを提言する。しかし、第三者の権利が関与している場合など、出版物によっては、例外が必要になる場合がある。
  • 研究評価
    プランSは、サンフランシスコ研究評価宣言(DORA)との整合性を取ることを提案している。そこではジャーナル・レベルの指標から離れることを推奨している。これは大歓迎であるが、DORAは大学における研究評価改革のためのいくつかの利用可能な経路のうちの1つにすぎないことを、プランSは明記するべきである。多様なニーズに合わせた新しい革新的な評価アプローチを探求するための大学の自由は、確保されるだけでなく、積極的に推進される必要がある。EUAは、「オープンサイエンスへの移行における研究評価に関するEUAロードマップ」(2018)に沿って、研究評価を改革する方法について”Coalition S”と協力することを提案する。
  • コンプライアンスへの道筋
    EUAは、オープンアクセス・ジャーナル又はオープンアクセス・プラットフォームを通じたコンプライアンスへの道筋、オープンアクセス・リポジトリへの学術論文の寄託、協定改革に関する実装ガイドラインの明確化を歓迎する。EUAは、”Coalition S”に対し、本やモノグラフに関するさらなるガイドラインを適時に作成し、本やモノグラフがより一般的である科学分野の学協会など、関連する利害関係者との対話に参加するよう要請する。
  • 原価管理
    EUAは、出版費用と購読価格に関する透明性を高めるというプランSの意図を尊重する。学術出版物へのアクセスにかかるコストの上昇は、大規模契約型購読への支出が最大の課題となっている欧州の大学にとって大きな関心事である。さらに、フルオープンアクセスの新システムのコストは、財政的に持続可能である必要がある。
    EUAにとっては、 APC(出版費用:Article Processing Charge)、出版社との透明かつ改革的な協定などについて懸念が残る。
  • リポジトリ
    研究成果をリポジトリに保管してグリーン・オープンアクセスを促進するには、インフラの柔軟性と相互運用性の要件を既存の国または機関の方針と一致させる必要がある。
  • 出版イノベーション
    実施のための時間枠を考えると、プランSの立ち上げおよび移行段階の間に、代替の出版の場を提供すべく、できるだけ早期にそのような施策を進めることをEUAは提言する。学協会や小規模出版社への影響の可能性について、EUAは、プランSの即時影響についての懸念に留意するが、科学界において彼らがプランSを遵守して重要な機能を担うことが可能なビジネスモデルを特定するという、学協会支援に向けた”Coalition S”の取り組みを賞賛する。
  • 世界的視野
    研究評価に加えて、国際的な研究出版および研究者の移動に対するプランSの不明確な影響が大きな懸念点として浮上している。それは、研究者が国際的な文脈での出版に関して矛盾した方針に直面する可能性があるからである。最も論理的な解決策は、できるだけ多くのファンディング政策をプランSと一致させることである。欧州および世界中のさらなる研究ファンディング機関がプランSに署名し実施するように、あるいは同様の方針に沿うように、”Coalition S”が取り組むことを、EUAは提言する。

[DW編集局]