[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州研究大学連盟(LERU)
元記事公開日:
2019/02/13
抄訳記事公開日:
2019/04/17

欧州研究大学連盟(LERU)が「プランS」の実施に関する提言を発表

LERU releases recommendations for implementation of Plan S

本文:

2019年2月13日付欧州研究圏(ERA)の標記発表の概要は以下のとおり。

欧州研究大学連盟(LERU)は、欧州委員会とサイエンス・ヨーロッパ(Science Europe) が共同で作成した「プランS」について、学術出版の今後の展開の在り方についての重要な見解表明として、またオープンアクセスが勢いを保つために必要な刺激策として注目している。同連盟は、それぞれの機関に対するプランSの影響について各メンバー大学に意見を求めた。その結果、全メンバーがオープンアクセスへの移行を全面的に支持し、各自の役割を果たすことで、プランSの支持者と協力して、プランSの原則を各自の研究機関や研究者に対して機能させることに、全メンバーが熱意を持っていることが判明した。

LERUメンバーは、プランS 実施の支援に向けて10項目の提言を作成した(LERUの発表サイトから)。

1) プランS の基盤となるタイムスケールは非常に難しい課題である。重要な協定の多くは複数年にわたる協定で、法的拘束力があり、簡単に再交渉することはできない。さらに、商業出版社は、彼らのインフラをプランSが提唱する新しい出版モデルに適合させるための時間が必要である。したがって、プランSの実施に向けたタイムスケールはそれに応じて長くする必要がある。

2) 現在、プランSに参加している欧州のファンディング機関からの資金で生じた研究は、全世界の研究成果に占める割合はわずかで、10%に満たない。欧州だけでは、世界中で100%のオープンアクセスに移行することはできない。中国、北米などの諸国やグローバル・サウス(南の発展途上国)などの地域の積極的な支援が、その成功を確保するための鍵となる。インドによる最近のプランSに対するコミットメント声明は、特に歓迎されるものである。

3) 交渉中の機関や大学図書館が、100%のオープンアクセスを可能な限り迅速に実現する方法を明確にするには、プランSは、何が変革的取り決めを構成するのかについて、より明確に示す必要がある。同様に、プランSの下での APC(出版費用:Article Processing Charge)の扱いはまだ明確ではなく、大学がグローバル・オープンアクセスのビジョンを実現可能にするには、さらなる作業が必要である。

4) 「プランS」と「プランS ガイダンス」のバランスは、ゴールド・オープンアクセス・ジャーナルおよびAPCを伴う論文出版に有利である。新しい出版プラットフォームやグリーン・オープンアクセス・リポジトリ、あるいはその両方は、上記と同じ注目を集めてはいない。大学を拠点とするオープンアクセス出版などの新規参入者が、学術出版向けの新たなアウトレットを提供するように奨励すべく、イノベーション基金が提供されるべきである。

5) プランSによるグリーン・オープンアクセス・リポジトリへの要求はかなりのものである。XMLのテキストをJATS形式で保存すると、大学の経費が膨らむ。この要件が維持される場合、出版社がこれらの形式の資料を機関リポジトリやその他のリポジトリに提供することを要件とする必要がある。同様に、ファンディングを受けている出版社は、著者に対して原稿の提出の際にORCID(Open Research and Contributor Identifier)のIDを使用するよう義務付けることが要求される。

6) 学術水準を維持する上で重要な役割を果たす学術団体や学会は、学術コミュニケーションの世界においてすべての関係者に役立つ解決策の提供を支援すべく、プランSの推進者と関わることに積極的である。

7) 研究者にとっては、プランSの背後にいるファンディング機関が研究プロジェクト申請の質(プロジェクト提案)と研究者の質(助成金)を判断する方法が明確である必要がある。

8) 同様に、大学では、特に初期のキャリア研究者にとっては、プランSがキャリアアップに与える影響について明確である必要がある。DORA(サンフランシスコ研究評価宣言)は、研究評価に盛り込まれる考え方を変える場合の主要な指針である。プランSはDORAを支持しているが、それだけでは十分ではない。研究実施機関がこの文化を向上させ、リーダーシップを発揮できるようにするため、実用的な支援を提供する必要がある。

9) プランSはそれ一つですべての場合に当てはまると仮定しているが、世界のさまざまな地域のさまざまな対象コミュニティでのさまざまなアプローチが、プランSの原則をより効果的に実施するのに役立つ。科学、技術、工学、医学に役立つアプローチは、芸術、人文科学、社会科学では自動的には機能しない。

10) 推奨すべき次のステップは、プランSの推進者がすべての関係者とさらなる関わりを持って、積極的に取り組み、オープンアクセスの原則に根ざしたグローバル情報広場の計画を積極的に実施することである。それによってオープンアクセスへの完全な移行がもたらされる。

[DW編集局]