[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国防高等研究計画局(DARPA)
元記事公開日:
2019/02/15
抄訳記事公開日:
2019/04/19

海洋生物を利用して敵の水中航走体を探知する技術を開発するためのDARPAによるPALSプログラム

Five Teams of Researchers Will Help DARPA Detect Undersea Activity by Analyzing Behaviors of Marine Organisms

本文:

2月15日付の国防高等研究計画局(DARPA)による標記報道発表の概要は以下のとおりである。

イタヤラ、ブラックシーバス、テッポウエビや生物発光プランクトンその他の微生物は、DARPAの「持続的な水中生物センサ」(Persistent Aquatic Living Sensors, PALS)プログラムの意外なヒーローになりそうである。5チームの研究者が、これらの海洋生物の行動を検出・記録し、それを解釈して、戦略海域中で活動する有人・無人の水中航走体の存在を識別、特性評価し、報告する、新しいタイプのセンサ・システムを開発している。この新しい、生物中心のPALS技術は、国防総省の既存のハードをベースとする海洋監視システムを増強し、軍の海中監視能力の範囲、感度および寿命を大幅に拡張する。

DARPAは最初、2018年2月に、無限とも思える世界の海域における敵の動きを監視するために、生物学を新しいソリューションに取り入れることを目標として、PALSプログラムを発表した。どこにでもいて、自己再生し、自立的な海洋生物は環境に適応しで高度に反応的であるのに対し、ハードウェアは資源集約的で、配備にコストがかかり、感知の形式も比較的限定されている。

PALSの参加チームは、観察された生物からの刺激応答を記録する技術を開発または応用するとともに、それらの応答を解釈し、誤った信号を排除し、分析結果を遠方のエンド・ユーザに送信するハード・ソフト統合システムを開発しなければならない。チームのソリューションは、水中聴音器、ソナー、カメラ、磁気・音響・運動センサなどの技術を含むものになる。

  • ノースロップ・グラマン社が主導するチームは、テッポウエビからの音と、発光生物による光学的な動きを記録、分析する。
  • 海軍研究所が主導するチームは、水中航走体の磁気的痕跡に反応する天然の微生物からの生物的信号を検知、特性評価するため、センシング・プラットフォームに微生物を組み込む。
  • フロリダ・アトランティック大学が主導するチームは、熱帯・亜熱帯環境のイタヤラの発声刺激を記録、分析する。
  • レイセオンBBNテクノロジーが主導するチームは、水中航走体の広範囲検知、分類、追跡の可能性のためにテッポウエビを用いる。
  • メリーランド大学環境科学センターが主導するチームは、水中航走体にかく乱された魚群の深度・加速行動を追跡するためのセンサをとりつけたブラックシーバスを標識放流する。

DARPAは、礁環境の周辺生物音を継続的に監視し変則事象を検知するための、聴音器アレーと音響ベクトル・センサを用いる海底システムを開発するため、海軍海中戦センター・ニューポート支部を助成する。このシステムは、サンゴ礁生態系生物相の自然の捕食者回避反応により発せられる音響シグナルの変化を分析するもので、水中航走体を準リアル・タイムで検知し、分類する間接的なシステムにつながる可能性がある。

DARPAはPALSを4年間の研究プログラムと想定しており、研究者がその研究成果を公表して科学コミュニティに広くレビューしてもらうことを期待している。しかしながら、もしDARPAがいかなるデータ、成果または技術スペックであれ、非公表情報として管理すべきものと認定した場合は、DARPAは研究者に対して、当該情報が公式ルートの外側に拡散しないよう保護することを求める。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]