[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2019/03/20
抄訳記事公開日:
2019/05/29

オピオイド中毒治療薬は効果的であり命を救うが、障壁によりアクセスと使用が制限されている

Medications to Treat Opioid Addiction Are Effective and Save Lives, But Barriers Prevent Broad Access and Use, Says New Report

本文:

3月20日付け、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は次のとおりである。

食品医薬品局によって承認された3種のオピオイド使用障害(OUD)治療薬は安全で効果的であるが、この治療が有効なはずの人の多くに行き渡っておらず、特定のグループ間でアクセスが不公平となっている、とNASEMの報告書は述べている。

慢性的脳疾患治療
報告書によると、200万人以上の米国人がOUD、つまり処方オピオイド、ヘロイン、その他の非合法なオピオイドの度重なる使用による神経構造と機能の変化からくる治癒可能な慢性的脳疾患を持っていると推測されている。OUDは生命を脅かす状態であり、薬物過剰摂取、感染症、トラウマ、自殺による死の20倍の危険性がある。2017年には米国で4万7,000人がオピオイド過剰摂取で亡くなっている。オピオイドの悪用を止めるのは非常に難しい。脳構造と機能を正常に戻すことに役立つ治療がある。メサドン、ブプレノルフィン、持続放出オナルトレキソンは食品医薬局(FDA)承認のOUD治療薬であり、禁断症状を軽減し、オピオイド渇望を軽減し、または将来ドラッグ使用した場合の反応を軽減する。このような治療を受けた患者は過剰摂取や他の中毒関連の原因による理由で亡くなることは少なく、治療による回復率は高く、長期的な予後も良くなる。また、ドラッグを注射することが少なくなるため、感染症に罹患したり拡大させたりすることも少なくなる。さらに、死亡のリスクは半減する。

  • 治療を阻む障壁
    OUD患者が急増するに従い、治療必要数は現在の使用率をはるかに超える。治療の主な障壁は次のとおり。
    麻薬中毒、OUD保持者、治療薬への誤解と偏見
  • OUDを必要とする人々を助ける立場にある人々(治療提供者、法執行機関及び他の刑事司法制度にかかわる人材を含む)への不十分な教育と訓練
  • メサドン、ブプレノルフィンなどに関する現行の規制がエビデンスに基づいていない。
  • 治療システムが断片的で、OUDを持つ人と、財政と支払いに関する政策がかみ合っていない。

治療へのアクセスを広げる
OUD治療薬へのアクセスは世代、居住地域、人種などにより異なるが、あらゆるグループの人々に対して治療薬の有効性が立証されている。米国では、メサドンは特殊な施設でのみ管理されている。上記3種類の薬が用意されている施設はほとんどない。医療関係機関はOUD治療を受けられる施設に患者を誘導すべきである。米国では刑事司法制度により収監されるOUD患者数は増えているが、治療はなされないか、医療監督の下に禁断する場合に限られる。結果、収監後は少数のOUD 患者のみが治療を受け、受けても出所後に治療が続かない。

米国は前例のない規模でOUD関連の健康危機に面している。すべてのセクター(ヘルスケア、刑事司法、OUD保持者と家族、など)がこの危機を戦略的に克服しなければならない。更なる研究が必要である。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]