[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
元記事公開日:
2019/05/14
抄訳記事公開日:
2019/07/05

EUREKA グローバル・イノベーション・サミット2019でのスキッドモア科学担当大臣の講演

EUREKA Global Innovation Summit 2019

本文:

2019年5月14日付ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の標記発表では、標記サミットにおけるクリス・スキッドモア(Chris Skidmore) 科学担当大臣の講演内容を報じている。概要は以下のとおり。

(英国の産業戦略)
英国はその産業戦略において次の4項目の主要課題を特定している。

  • データと人工知能の潜在能力を活用する
  • 気候変動に対処するため、クリーンな成長に移行する
  • 人、物、サービスの動き方を変革する
  • 世界中の多くの人々が100歳を超えて生きる時代が来るという新たな現実に適応する

これらは世界的な課題であり、政府、科学者、研究者、イノベーター、起業家、企業、社会の間の世界的な協力を通してのみ、これらに対する取り組みは成功する。英国が発展途上国に影響を与える問題について世界中の各国と提携し、グローバル・チャレンジ・リサーチファンドに15億ポンド、ニュートン・ファンドに7億ポンドを投資しているのは、そのためである。

(国際インフラ)
科学研究の目的は常に卓越性に重点を置いている。国際的なインフラはその卓越性を育み、拡大できることを確保にするものである。

  • ジョドレルバンク天文台には歴史的に最も野心的な国際科学プロジェクトの1つであるスクエア・キロメートル・アレイ(SKA)プロジェクト(次世代大型電波望遠鏡計画)の本部がある。このプロジェクトは巨大プロジェクトで、「メガサイエンス」と呼ばれ、11か国の努力を結集している。
  • オクスフォードシャーでは英国が引き続き欧州トーラス共同研究施設(JET)核融合炉のホスト国となっており、それにより英国は核融合技術における世界のリーダーとなっている。財務大臣は、Brexitで何が起ころうとも、JET核融合炉に対する英国のファンディングは保証すると述べており、3月に欧州委員会との間で新規の契約延長に署名した。
  • 核融合の将来に関して、英国はフランス南部の国際核融合エネルギー・プロジェクト(ITER)への参加継続にも熱意を持っている。現在英国企業がプロジェクトの構築を支援している。
  • 英国は欧州原子核研究機構(CERN)の創設メンバー国として、取り組みの継続を決意し、昨年1億3,700万ポンドを投資し、2番目に大きな分担国の地位を維持している。
  • 欧州宇宙機関(ESA)の2016年閣僚級会議で、英国は14億ユーロという過去最高の投資を記録し、ESAの年間会費の平均は3億5,000万ユーロを超えた。今年の閣僚級会議ではESAとの契約を更新する予定であるが、欧州との協力だけでなく世界の他の地域との協力に関しても、非常に意欲的なプログラムに投資する予定である。

(EU研究・イノベーション・プログラム)
英国はEUを離脱するかもしれないが、欧州の研究・イノベーション・パートナーシップに対する取り組みからは撤退しない。

  • EU離脱の前にHorizon 2020の公募に応募して採択された全ての英国プロジェクトに対する支援について、合意なき離脱の場合でも英国政府が保証することにした。
  • 英国は次なるHorizon Europeプログラムへの全面参加の方法を探っている。
  • 英国は欧州の国であるが、2.4%目標(2027年までに研究開発投資をGDP比で2.4%にする)を満たすには、国際協力の範囲を拡大する必要がある。

(国際投資を引き寄せる世界トップクラスの研究施設・大学)
英国の大学は人、企業、投資を引き付ける「磁場」を提供している。世界トップクラスの研究機関が、世界トップクラスの知識を引き付け、世界トップクラスの人材を生み出している。例えばケンブリッジには現在欧州最大の技術クラスタがあり、技術系企業が1,500社あり、6万人を雇用し、年間売上高は130億ポンドである。磁極となっているのは人材とアイデアであり、それが国際的投資を牽引している。

  • 英国が引き続き国際投資を引き付け、世界トップクラスの研究施設や大学との提携を狙う国際企業の目的地となることを期待する。

(人材への投資)

  • 合計550名の未来のリーダーフェロー(Future Leaders Fellows)に総計9億ポンドを投資する。先ごろその最初の41名を発表した。英国のフェローシップは、真に国際的で、世界中の研究者に開放されており、英国で研究を進めるよう企画されたものである。最初のフェローシップ獲得者にはカナダや日本の研究者が含まれているが、これら研究者は英国に移住し、自らの研究キャリア遂行の場として英国を選ぶことになる。

(先進技術開発における国際的パートナーシップ)
英国は最先端技術の開発という共通の目標において国際的なパートナーシップの構築を確保する必要がある。

  • 電気自動車やより広範なクリーン・エネルギーシステムへの移行を可能にするより優れたバッテリー蓄電技術の開発を目的として、南アフリカの研究者らとの提携に5,000万ポンド強を投資する。
  • セクター間の問題解決にAIの優れた判断力を取り込むべく、英国・カナダAIイノベーション・チャレンジを立ち上げた。
  • 最近では、2017年に米国、カナダ、中国と、2018年にはイスラエル、タイと、各々二国間の科学研究協定を締結した。

(国際研究・イノベーション戦略の発表)
この度、国際研究・イノベーション戦略(IRIS)を発表した。この戦略では今後の長期的な協力関係に関する英国の基本方針を初めて設定している。そこでは、英国の大学、研究機関、企業のほか、規制制度、品質インフラ、政策・統治の専門能力など、英国の研究・イノベーション・システムを幅広く包括的な視点で見ている。その各々を互いの利益のために国際的パートナーに開示する方法を示している。

[DW編集局]