[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
元記事公開日:
2019/05/14
抄訳記事公開日:
2019/07/08

英国の国際研究・イノベーション戦略

International Research and Innovation Strategy

本文:

2019年5月14日付ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が発表した標記ポリシー・ペーパーの要旨を下記に抜粋要約して記す。

本戦略は英国がその最新の「産業戦略」の目標達成に資するべく、国際的な研究・イノベーション・パートナーシップの展開方策を定めたものである。

英国は世界トップレベルの研究大国であり、多方面にわたり影響力があり、世界規模でつながった研究基盤を有している。この優れた研究基盤の上に、世界トップクラスの人材、物理インフラ・デジタルインフラを懸け橋として統合されたイノベーション・エコシステムを構築し、かつ投資環境や規制環境を実現した。これにより英国は世界で上位4位内に入るイノベーション大国となっている。

本戦略では、グローバルな課題に取り組み、かつ成長を生み出すために、世界のベストな相手との国際パートナーシップに対して、英国の研究・イノベーション・システムの全てを開放するための方策を示している。

研究・イノベーションのあらゆる領域でのインパクトを期待している。それは、基盤となる科学的発見から最先端技術の開発に至るまで、また実用的な解決策の取り込みから課題の共有やグローバルなガバナンス枠組の強化に至るまでである。

● 本戦略における主要テーマ

本戦略では、次のような一連の重要テーマを通じて、国際的に著名な支持組織、外国政府、研究機関、企業や投資家、個々の研究者や起業家に対する英国の提案を目標としている。

  • グローバル・パートナー
    卓越性と影響力を駆使して、パートナーシップとオープン性を構築、推進する方策。
  • 人材の結集
    研究者と起業家をつなぎ、そのアイデアの開発と移転を支援し、人のグローバルなネットワークを構築する方策。
  • グローバルなイノベーション拠点
    世界のイノベータ、起業家、投資家を結集して未来の産業を構築するべく、英国全土にイノベーション拠点を設ける方策。
  • インセンティブと資金支援のパッケージ
    英国のインセンティブと資金支援のパッケージにより革新的なベンチャー企業や規模拡大企業を引き寄せる方策、さらにはその後の支援拡大策。
  • 未来技術向けのグローバル・プラットフォーム
    世界中に行き渡って強力な英国のガバナンス、知的財産権、標準の枠組みを、新興の革新的技術を前進させるために世界共通の規制方式設計に役立てる方策。
  • 持続可能な未来を目指すパートナー
    グローバルな課題に最大限取り組むべく、協働パートナーシップを構築し、それに投資する方策。
  • より適切な研究運営、研究倫理、研究効果の標榜
    知識の共有と信頼の構築を目指すべく、研究ガバナンス、研究倫理、およびオープンサイエンスに関する国際的合意を、多国間の場を通じて形成する方策。

● 世界的に見た英国の研究・イノベーション

  • 世界の研究論文発表に占める英国の割合:6%
  • 世界で引用頻度の最も高い記事群に占める英国の割合:15%
  • 2017年の英国企業による研究・イノベーションへの投資額:237億ポンド
  • 「グローバル・イノベーション・インデックス」における格付け:上位4位内
  • 世界の上位10位以内にランク付けされた大学:3大学
  • 世界銀行のビジネス環境ランキング:上位10位以内

● 持続可能開発を対象とする英国のグローバル研究開発基金

  • ニュートン・ファンド
    7億3,500万ポンドの基金を通じて、現在17か国と協力関係にある。ブラジル、チリ、中国、コロンビア、エジプト、インド、インドネシア、ヨルダン、ケニア、マレーシア、メキシコ、ペルー、フィリピン、南アフリカおよび広域アフリカ、タイ、トルコ、ベトナムである。本プログラムは、政府レベルで合意された二国間の地域研究・イノベーション・パートナーシップを支援する。
  • 英国ワクチン・ネットワーク
    このネットワークでは、大流行を引き起こす可能性のある感染症向けの特定のワクチンやワクチン技術に的を絞った投資を行うべく、産業界、学界、関連のファンディング機関を結集させる。政府は2016~2021年の間に1億2,000万ポンドの投資を約束している。
  • 国際開発省(DFID)の研究投資
    DFIDは広域、ハイリターン、ミッション主導の研究・イノベーションに投資している。科学、社会科学、技術への投資をターゲットにしており、その目的は、しばしば最も脆弱な国々で最も貧しい人々が直面している複雑な開発課題に対する新しい解決策を見つけることであり、またスケール効果をもたらすグローバル公共財の生成である。

地球規模の目標を達成し、より安全で、健康的で、より繁栄した世界の実現に向けて厳密な証拠に基づく決定を下せるようにするべく、政府機関や国際開発コミュニティの支援に年間予算の3%(約4億ポンド)を支出している。

  • フレミング基金
    中低所得国支援に2億6,500万ポンドを投資しており、これらの国々が抗菌剤耐性に対処するためにデータの生成、共有、利用ができるようにしている。
  • グローバル・チャレンジ・リサーチ・ファンド
    この基金では、最も困難な世界的開発課題に対処する目的で、英国の研究基盤の動員に15億ポンドを投資している。英国と開発途上国の研究者、政策立案者、実務者の間の強力で永続的なパートナーシップの構築を支援している。
  • 国立衛生研究所(NIHR)グローバル衛生研究プログラム
    NIHRは、低中所得国の国民の直接的かつ主要な利益になる高品質の応用医療研究を支援するため、政府開発援助(ODA)を使用して4億2,950万ポンドを割り当てている。
  • グローバル抗菌剤耐性(AMR)イノベーション基金
    5,000万ポンドの「ワンヘルス」(人と動物の健康は相互に関連しているという考え方)基金を質の高い初期段階研究に投資し、これまでAMR研究開発において、無視され資金も十分でなかった領域におけるイノベーションを促進し、AMRの脅威に対処することで、低中所得国の人々の福祉向上を図る。
  • 国際気候ファイナンス
    英国の58億ポンドの投資を通じて、技術の大規模な展開を支援し、クリーンエネルギーを必要とする人々にそれを提供し、最貧層の人々が気候変動の影響を回避できるよう支援することで、途上国におけるクリーン成長を支援する。

[DW編集局]