[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2019/05/23
抄訳記事公開日:
2019/07/17

患者のデータを安全かつ効率的に利用するための共同研究

Patientendaten sicher und intelligent nutzen

本文:

ヘルムホルツ協会の6センターが、患者のデータを安全かつ効率的に処理する方法について共同で研究することになり、これに関して連邦教育研究省(BMBF)は概略下記のような報道発表を行った。

ヘルムホルツ6センターの共同研究で中心となるのは、患者の利益と患者のプライバシー保護である。新たなヘルムホルツ医療セキュリテイ・プライバシー・AI研究センター(HMSP)では、ITセキュリティ、プライバシー、人工知能(AI)、医療の領域の研究者が協力し、個別医療に関する問題の解決策を共同で開発する。

研究者は世界中で毎日、血液サンプル、レントゲン画像、遺伝子分析による患者のデータを集めており、これにより、認知症、がん、あるいは梗塞等の国民病の新しい治療法を開発しようとしている。絶えず増加している生物医学的なデータ量を、安全に、効率的に利用することは研究者にとって大きな重要課題である。個別化医療は以前から社会にとっての重要なテーマであった。それは患者の体質や病気の特徴に合った新規の治療法への有望なチャンスを患者にもたらす。

個別化医療はAIの急速な進歩に後押しされ、急速に成長する市場であり、経済拠点ドイツにとって重要な要素でもある。このチャンスを利用するために、必要な患者のデータの安全な取り扱いを保証しなければならない。

カルリチェク大臣談:「医療におけるデジタル化は大きなチャンスを秘めているが、それには信頼性も必要である。自分のデータは安全に守られているのか。人々は医学的所見のような非常に慎重に取り扱うべきデータにおいて、この疑問を自身に問いかける。個別化医療のチャンスを利用しようとするならば、データの機密性を確保する必要がある。HMSPにおいては、コンピュータ科学や医療のトップ研究者たちの研究によって、個別医療の安全な応用を開発していく」。連邦政府はヘルムホルツ協会に対し研究予算の90%を負担している。

ヘルムホルツ協会のCISPA-Center for Information Security の設立所長であり、HMSPのスポークスマンでもあるバッケス教授(Professor Michael Backes)は、「こうした膨大な量の医学的データの収集、分析、整備の拡大によって、科学者はこれまでに存在し得なかった知見を得、また新たな道を開いてくれるものである。信頼に足る、安全で、効率的な方法によって実施するためには、全く新しい方法と学際的なトップレベルの研究が必要である」と語った。CISPAによって開発された新しい方式によって、暗号化された状態で患者のデータの効率的分析や処理が可能になる。バッケス教授は「高度な機密情報のプライバシーを確保しながら、もう一方では研究者に対して、個別化医療の更なる進歩に向けた重要なデータへのアクセスを提供する」と強調している。

CISPAは既に2018年以降DZNE(ドイツ神経変性疾病センター)の研究者たちとHMSPの枠の中で協力している。その後、ドイツがん研究センター(DKFZ)、ヘルムホルツ感染症研究センター(HZI)、マックス・デルブリュック分子医学センター(MDC)、ヘルムホルツ・ミュンヘン・センター-ドイツ保健環境研究センター の4つが加わっている。

[DW編集局]