[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2019/08/20
抄訳記事公開日:
2019/10/01

超多剤耐性結核菌の新薬が認可

Karliczek: Ein wichtiger Schritt im Kampf gegen die tödlichste Infektionskrankheit der Welt

本文:

非常に強力な耐性を持った結核菌に対する新薬が開発され、投与への認可が得られた。これに関してドイツ連邦教育研究省(BMBF)は概略下記のような報道発表を行った。

BMBFの助成を受けた公益組織「TBアライアンス」によって新薬、プレトマニド(Pretomanid)、が開発され、アメリカの食品医薬品局(FDA)から超多剤耐性結核菌の治療への使用が認可を得た。カルリチェクBMBF大臣は、「これは世界で最も致死的な感染症との戦いにおける貴重な一歩である」と語った。

世界中で年間1,000万人以上が肺結核(TB)に罹り、その結果、約140万人が死亡している。これは他のどのような感染症よりも多い。抗生物質に強い耐性を持つ結核菌による感染症が世界的に増加しており、問題は深刻化している。しかし企業にとって研究開発に資金を投じるインセンティブがほとんどないのが現状で、TB感染症の98%が開発国および後進国で発生しており、そのマーケットは儲からないからである。結果、20世紀末までに、世界で結核に対する新薬はほとんど開発されなかった。

カルリチェク大臣は、「経済的に大きな利益を約束できない領域において、緊急に必要な研究を実行し事態を打開しなければならない。BMBFは世間の関心が低く貧困と深い関係にある疾病に対する研究を支援する」と強調。

2016年からBMBFはTBアライアンスの活動を2,000万ユーロで助成し、その成果が新薬プレトマニドの開発である。従来の結核治療で行われる方法で、他の二つの薬(ベダキリンとリネツォリド)と併用する「BPal.セラピー」と言われる治療方法に用いられる。

この併用療法の効果および安全性は14か国の19の治験で実証および確認されている。TBアライアンスのシュピーゲルマン(Mel Spiegelman)CEOは、「FDAの認可は世界で致死的な超多剤耐性感染症に苦しむ患者にとって勝利である」と語った。治験結果によると、治癒率は35%から90%へと上昇している。しかもこれまでの8つの薬品を含む治療は期間が18ヶ月であったものが、6ヶ月へと短縮している。加えて併用療法は初めて経口投与が可能であり、患者は注射から開放される。

現在さらなる治験において、その他の種類の結核を治療するために、様々な併用療法でプレトマニドがテストされている。これによって、事実上全ての結核患者が、比較的簡単で低コストの治療ができるという可能性を視野に捉えている。

背景:

2011年以降、BMBFはワクチン、医薬品、診断法等製品開発パートナーシップに関する国際的なイニシアチブ(PDPs: Product Development Partnerships)に参加している。これはなおざりにされている疾病に対する薬品、ワクチンおよび診断法を開発するための非営利組織である。PDPsは公的、私的な慈善資金提供者の資金によって支えられている。現在の第二フェーズ(2016年から2022年まで)ではBMBFは総額6,400万ユーロで6つのPDPsを助成している。世間から顧みられない疾病でかつ貧困に関連付けられる感染症、ならびに低、中所得諸国にとって特に重要な、新規および再発性感染症に重点が置かれている。

[DW編集局]