[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2019/10/11
抄訳記事公開日:
2019/12/03

未来の自動車のための暗号化の取り組み

Kryptografie für das Auto der Zukunft

本文:

10月11日、マイスター連邦教育研究省政務次官がフラウンホーファー安全情報技術研究所(SIT)でQuantumRISCプロジェクトの許可証を授与。これに関して連邦教育研究省(BMBF)は概略下記のような報道発表を行った。

このプロジェクトでは、自動車の組み込みシステム(embedded system)が、たとえ量子コンピュータによる攻撃であっても、セキュリティを守る方法を研究する。

これに関してマイスター政務次官は以下の通り語った。
「ドイツの経済と産業の競争力を保持するために量子コンピュータ関連で暗号研究は非常に重要である。BMBFは3年継続のプロジェクトQuantumRISCを290万ユーロで助成し、安全な暗号理論をできるだけ迅速かつ効率的に実用につなげることを目標としている。デジタル時代もドイツのバリューチェーンを持続的に強化していかなければならず、このプロジェクトにはあらゆる領域から専門家が参加する。」

量子コンピュータが今日の暗号方式のセキュリティを突破する前に、いわゆるPQC(Post Quanten Cryptography)技術が開発され、製品として使用可能にならなければならない。PQC方式は、暗号理論研究の状況からして、量子コンピュータによっても突破され得ないものである。実用に耐えるPQC方式の開発はそれだけに緊急なものとなる。組み込みシステムの中の暗号化ハードウエアおよびソフトウエアは、アップデートやパッチの制限があるにもかかわらず、長年にわたり安全であり続けることが保証されなければならない。

ここで対応するのがQuantumRISCプロジェクトである。PQC方式は、組み込みシステムの実際的要件に対応する。現在のPQC方式では大きな計算能力、または大きな記憶容量を求めることが多い。しかし組み込みシステムはこれに対応できない。このため同プロジェクトでは、リソースが制限された環境においても充分なセキュリティを保証してくれる新しいPQC方式を開発する。自動車分野では、現存のシステムやアーチテクチャーとの相互作用はもとより、将来クリプト方式と交換できるようにする統合システムの可能性も研究されることになる。

フラウンホーファーSIT所長でナショナル応用サイバーセキュリティ研究センター長のヴァイトナー教授(Prof. Waidner)は、「ダルムシュタットで我々はサイバーセキュリティにおける量子技術の影響に関するあらゆる問題に取り組んでいる。範囲はPostQuanten-アルゴリズムの量子コンピュータからQKB(Quantum Key Distributio、量子鍵交換)にまで至る。現在のPost-Quantum方式に関する国際的な標準化活動にも該当する。QuantumRISCプロジェクトにおいては実用化に注力しており、特に自動車などの産業利用に適した方式と実装の可能性を探求している」と述べた。

背景:
“Post-Quantum-Cryptography”の領域ではドイツは主要拠点の一つに数えられる。米国の国立標準技術研究所(NIST)は2017年にPQC方式に関する競争的標準化プロセスを開始した。QuantumRISCコンソーシアムの研究者たちからの多くの提案により、現在進行中の標準化プロセス第二ラウンドが生まれた。

関連情報:
量子コンピュータの開発は急速に進行しており、中期的には現在の近代的暗号化方式の大部分を不安なものにしかねない。プロジェクトパートナーはContinental Teves AG、 Elektrobit Automotive GmbH、 ラインマイン専門大学、MTG株式会社、ボーフム・ルール大学、ダルムシュタット工科大学、フラウンホーファー安全情報技術研究所(SIT)である。

[DW編集局]