[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
連邦議会上院
元記事公開日:
2019/11/18
抄訳記事公開日:

米国の研究企業に対する脅威:中国の人材募集計画

Threats to the U.S. Research Enterprise: China’s Talent Recruitment Plans

本文:

2019年11月18日付けで連邦議会上院が公表した標記報告書の概要は以下の通りである。

米国の納税者は、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)等を介して、毎年1,500億ドル以上を米国の科学研究に支出している。米国は、互恵性、メリットベースの競争、透明性といった特定の価値に基づいて、研究開発体制を構築した。これらの価値観は、アイデアの自由な交換を促し、厳密な研究成果が広まることを促し、研究者が知的資本の恩恵を受けることを保証してきた。

ただし、一部の国は、この米国の開放性を利用して、国益を向上させようとしている。特に中国は200を超える人材採用計画を通じてこれを行っており、その中で最も顕著なのが、2008年に開始された「千人計画(Thousand Talents Plan)」である。これは米国で研究開発に従事している研究者に給与、研究資金、研究室スペース等のインセンティブを与え、米国で得た知識等を中国への移転を図るものである。このような背景から、連邦議会上院が、米国における研究開発活動への外国人の関与と研究成果の取扱いに関する報告書を取りまとめた。本報告書での主な勧告事項は次の通りである。

1. 連邦政府機関は、米国の知的資本の違法・脱法の譲渡に対処するための包括的な戦略を策定する必要がある。
2. 連邦政府機関は、外国による人材採用計画に関する情報を機密解除し、広める必要がある。
3. 議会と政府は、研究と知的財産を保護するための措置の向上を図りつつ、米国における外国人学生・研究者と国際協力の重要性を再確認する必要がある。
4. 連邦法執行機関および諜報機関は、米国の研究コミュニティとの関係を調整し、関連情報にアクセスし、対処する必要がある。
5. ファンディング機関は、助成金申請プロセスの調整および全ての外国との利益相反、コミットメントの競合、外国からの支援等についての報告要件を標準化する必要がある。
6. 米国の研究コミュニティは、「自身の共同研究者を知る」文化を確立する必要がある。
7. ファンディング機関は、コンプライアンス・監査プログラムを介して、助成金受領者に利益相反や責務相反を正確に報告させるようにする必要がある。
8. ファンディング機関は、米国政府の資金提供および研究施設にアクセスできる助成金受領者に関する情報を共有する必要がある。
9. 商務省は、米国の国家安全保障に不可欠な新興・基盤技術を特定するための省庁間プロセスに、基礎研究のレビューを含める必要がある。
10. 国務省は、技術、知的財産、および基礎研究の違法または法外な譲渡に関与している疑いのある個人の非移民ビザを拒否するための必要事項を特定する必要がある。
11. 政府は基礎研究成果の公表原則を規定したNSDD-189の更新を検討し、米国政府の資金提供による基礎研究に追加の制限を実施する必要がある。
12. 連邦法執行機関および関連機関は、人材採用を促進または仲介するネットワーク、プラットフォーム、または外国政府代理として機能する米国に拠点を置く事業体を特定する必要がある。
13. ファンディング機関は、研究機関と協力して、研究データの不正流用のリスクを軽減するために必要なサイバーセキュリティ対策を実施する必要がある。
14. ファンディング機関は、外国の人材採用プログラムの受給要件の条件の完全な開示がない場合、当該プログラムの参加者に資金提供すべきでない。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]