[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2020/01/14
抄訳記事公開日:
2020/03/03

「欧州グリーン・ディール投資計画」と「公正移行メカニズム」

Financing the green transition: The European Green Deal Investment Plan and Just Transition Mechanism

本文:

2020年1月14日付欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり。

EUは、2050年までに世界初の気候中立圏になることを約束している。これには、EUと加盟各国の公共部門ならびに民間部門の両方から多大な投資が必要である。このほど発表された「欧州グリーン・ディール投資計画」(持続可能な欧州投資計画)は、公共投資を行い、(少なくとも1兆ユーロの投資につながる可能性がある)InvestEU をはじめとするEU資金調達手段を通じて、民間資金を引き出す。

すべての加盟国、地域、セクターが移行に貢献する必要があるが、課題の規模は同一ではない。地域によっては特に影響を受け、深刻な経済的・社会的変革を被る場合がある。「公正移行メカニズム」(JTM: Just Transition Mechanism)は、当事者を支援し、これらの地域で必要な投資を生み出すべく、状況に応じた財政的・実践的な支援を提供する。

● 欧州グリーン・ディール投資計画

EU資金を動員して、(気候中立で、グリーンで、競争力のある包摂的経済への移行に必要な)官・民投資を促進・刺激するための有効な枠組みを創設する。グリーン・ディールの下で発表されるその他のイニシアチブを補完するべく、計画は次の3つの側面に基盤を置く。

  • 資金支援:次の10年間で少なくとも1兆ユーロの持続可能な投資を実施する。EU予算による気候・環境対策への支出のかつてないほど大きな割合が、欧州投資銀行(EIB)が果たす重要な役割により、民間投資に集中する。
  • 実現化:官・民投資を推進して転換を図るための、インセンティブを提供する。EUは、持続可能な融資を融資制度の中心に置くことで投資家にツールを提供し、グリーン予算やグリーン調達を奨励することで、公共機関による持続可能な投資を促進する。
  • 実践的支援:ECは、持続可能なプロジェクトの計画、企画、実行において、公的機関やプロジェクト推進機関に対する支援を行う。

● 公正移行メカニズム(Just Transition Mechanism, JTM)

JTMは、気候中立経済への移行が公正な方法で行われ、誰も取り残されないことを保証するための重要なツールである。すべての地域が資金を必要としていて、「欧州グリーン・ディール投資計画」がそれに応じる。本メカニズムは、移行の社会的経済的影響を緩和するために、最もその影響を受ける地域において2021~2027年の間に少なくとも1,000億ユーロを動員して、的を絞った支援を提供する。本メカニズムは、化石燃料のバリューチェーンに依存する労働者とコミュニティを支援するために、必要な投資を創出する。これは、EU予算による多額の資金提供に加えて、移行に直接関連するあらゆる手段を通じて行われる。

JTM は主として次の3つの財源で構成される。

1) 公正移行基金
75億ユーロの新規EU基金であり、EUの次期長期予算に関する欧州委員会提案に追加されるものである。

2) InvestEU の下での専用の公正移行制度
最大450億ユーロの投資資金。該当地域に利益をもたらし、その経済の新たな成長源の発掘に資する持続可能なエネルギーや輸送などで、民間投資の誘致を目指す。

3) EU予算に支えられたEIBによる公共部門融資制度
250億~300億ユーロの投資資金。地域暖房ネットワークへの投資や建物の改修など、公共部門への融資に使用される。

JTMは資金支援以外にも関与する。公正移行プラットフォームに基づいて、ECは加盟国と投資家に技術支援を提供する。

[DW編集局]