[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2020/01/09
抄訳記事公開日:
2020/03/09

アントワーヌ・プチCNRS理事長「フランスの研究界に資金と簡素化が必要」

Antoine Petit : « La recherche française a besoin d’argent et de simplifications »

本文:

2020年1月9日付国立科学研究センター(CNRS)の標記発表の概要は以下のとおり。

政府とCNRSとの間で間もなく締結される次期2019~2023年目標・達成契約(COP)が理事会に諮られた。アントワーヌ・プチCNRS理事長は、CNRS Hebdo 誌とのインタビューで、この契約の主要路線を明らかにした。

● 2020年に期待すること

CNRSには資金と簡素化が必要である。従ってCNRSや、より一般的にはフランスの高等教育・研究・イノベーションに関わる全てのプレーヤーが、さらに多くの知識を生産し、その知識を移転して、より公平で、より持続可能で、よりオープンで、より寛容な新しい世界の構築に資することができるように、野心的な複数年研究計画法(の成立)を期待している。

● 2020年頭に公表された 2019~2023年目標・達成契約(COP)の策定経緯

高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)と締結するこの契約は、2つの部分で構成される。1つは研究に関する部分で、この種の文書としては非常に独創的な部分である。もう1つはより古典的な部分である。研究部分は、CNRS運営委員会で考案・策定した。全体は科学審議会(CS)で議論され、修正された。その後、各研究部門(instituts)の科学審議会で再度修正された。COPは、技術委員会(CT)および理事会(CA)にも諮られた。最終的にCTは反対票を投じたが、CSおよびCAが承認した。

非常に大規模な共同作業で、主要優先課題の検討に時間をかけた。

● COPは研究のロードマップとなるか?

「CNRSの10の研究部門(instituts)の各々において、主として知識の限界を押し上げる目的で、探究心に導かれた各々の領域の基礎研究を行っている」と文書に明記することで、誤解を避ける努力をした。

上記視点では、6つの社会的主要課題(気候変動、教育の不平等、人工知能、健康と環境、未来の国土、エネルギーの移行)、さらには主に分野別の約40テーマの優先課題を特定することも有用と考えた。いずれも資金の面で特別の注意を惹くのに役立つ。

これらの主要な研究軸が、今後5年間の科学の主要な発展に対するCNRSのビジョンを反映している。これら優先課題は、各科学界との多くの対話から出てきたものであり、また2019年に大学パートナーと行った多くの交流も考慮したものである。

● COPは財政的な追加支援なしでは完全履行はできないが、政府に対する要求事項か?

本契約は、CNRSと政府の両当事者が署名する文書である。序文に書かれているように、このCOPの目標の一部は、「CNRSが現在は持ち合わせていない機動的手段と余剰手元資金を前提としている」。現行契約を改正により変更する可能性を検討するべく、両者は複数年研究計画法の公布の数か月後に(同法によって開かれる新たな展望を取り込むため)会合を持つことに同意している。

この次なる会合では、手段の変化による「絞り込んだ目標への道筋」を定める必要があり、その実現は最終的に政府が議会に提案する予算によって決まる。

● CNRSに配賦された政府補助金では、250人を超える研究者と310人のエンジニアやテクニシアンなどの研究支援者、事務職員を採用できなかった。この職員採用数の減少が、国際競争における当施設の能力を損なうリスクはないか?

採用を制限せざるを得なかったが、各研究室からこぞって表明された要請に応えて、研究支援職で努力する選択をしたことを強調したい。これらの職員は研究の質に多大な貢献をしており、CNRSの魅力の重要な要素を構成している。

CNRSは、複数年研究計画法の採決後に、職員数の複数年変化計画を作成する。この計画には、研究者とエンジニア・テクニシアン両方について、常勤および非常勤職員の「公共サービス任務に対する補助金(SCSP)」に基づく採用が含まれる。

CNRSの基本的な問題は、給与が83%を占める予算の中でやり繰りの余地を見つける必要があることである。この割合は世界的にみても高すぎる。一方で、我々は、特にエンジニア・テクニシアンの一時的な不在を補償するために、より多くの非常勤職員、博士課程学生、ポスドク、外国人教授、その他より多くの期限付き契約を採用し、歓迎する手段を取り戻す必要がある。つまり、システムの柔軟性を回復することである。

● 高等教育・研究界は複数年研究計画法に多大の期待をしている。今日のフランスの研究界に最も必要なものは?

CNRSはそのWebサイト cnrs.fr で多数の提案を行っている。しかし最も欠如しているのは、資金と簡素化である。予算の情況についてはすでに述べたが、簡素化も必要である。フランスのシステムは俊敏性と柔軟性を絶対に獲得しなければならない。

[DW編集局+JSTパリ事務所]