2019年11月9日付ロシア大統領府の発表によると、人工知能（AI）に関する東欧最大のフォーラムが2019年11月8－9日モスクワで開催され、その全体会議においてプーチン大統領が講演を行った。講演の概要は以下のとおり。

数学・物理学から心理学・言語学に至るまでの自然科学と人文科学における画期的な成果、これがAIに蓄積されているものである。これほど多様な知識と多様な分野を融合させた例を他に見つけることは困難である。

これは、偉大な地理的発見や宇宙探査のように、未知への一歩でもある。これは、いわゆる強力なAIについて特に当てはまることで、文明全体の基盤や突破口になる可能性がある。

創造性と企業のイニシアチブに最大限の自由を提供し、新興企業を立ち上げ、リスクを負い、画期的な製品を市場に導入するすべての人に、最適な条件、有利で馴染みやすい空間を作り出す必要がある。とりわけ、ベンチャー・ファイナンスの便利で効果的なメカニズムを展開する必要がある。そしてもちろん、技術規制において障壁と法的制限を解除すべきである。

例えば、我々は皆、AIにとって実際の食料や燃料はデータ、それも大量のデータであるという事実を十分認識している。その品質が良いほど、その量が大きく完成度が高いほど、アルゴリズムはより効果的で、結果はより正確になる。AIには、より多くのデータが供給されるべきであり、データを使用する場合の不必要なハードルは一貫して取り除かれるべきである。

当然ながら、市民の安全、市民の利益や権利の遵守は保証される必要がある。ここの部分の境界線が非常に薄いことは、我々全員が確実に理解していることである。人々が自身のプライバシーを確保する必要があると考える場合、情報の最大限の露出と、その情報の保護に対する人々の権利とのバランスを見つける必要がある。

データを収集、保存、処理するには、クラウド・プラットフォーム、ソフトウェア・ハードウェア・システムを構築し、ロシアの企業、科学界、教育界向けにそれらへのアクセスを拡大する必要がある。さらに、重要な問題は、新しい人材を獲得するための教育の機会である。

AIシステムは、知的に熟練された人々によってのみ、構築・利用できる。我々は、プログラマー、数学者、コンピューター言語学者、データ処理および深層学習のスペシャリストのために必要な教育の量と質を数倍に増やす必要がある。ロシアの大学はAIの先駆者になる必要がある。

また、AI技術を完全に理解して使用でき、プラットフォーム・ソリューションなど高度のソリューションに基づいて産業プロセスや管理プロセスを構築できる、全世代の専門家を育成する必要がある。AIを活用し、その分野とその環境でAIを活用する方法を知る能力は、経済、企業、教育、医療、法執行機関において、そしてもちろん政府のあらゆるレベルで、全ての職業における必須要件でなければならない。

AI技術はあらゆる分野・業界で使用できる可能性を秘めている。AI技術が官僚機構の惰性や停滞を取り除き、行政手続きの透明性と効率を劇的に高めることが非常に重要である。

「人工知能開発国家戦略」では、今後10年間のタスクの概要を説明している。政府、専門家コミュニティ、企業の努力を結集して、計画を実際のソリューション、イノベーション、（需要がある）競争力のある製品に転換するために、可能な限り迅速に行動することが重要である。

快適で安全な都市、アクセス可能で質の高い医療と教育、近代的な物流と信頼できる輸送システム、宇宙と世界の海洋の探査、そして最後に、我が国の防衛能力–これらすべての分野での進歩は、現在および近未来のAIの進歩に依存する。

現在、AI使用の社会的側面と影響に関する議論が世界で展開されているが、これは明らかに重要な問題である。専門家コミュニティと企業が人間とAIとの間の相互作用に関する倫理規則コードの制定を検討するよう提案する。

[DW編集局]