[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
元記事公開日:
2020/01/24
抄訳記事公開日:
2020/03/24

英国の研究・イノベーションのレベルアップに関するスキッドモア科学担当大臣の講演

Levelling up research and innovation right across the United Kingdom

本文:

2020年1月24日付ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の発表では、クリス・スキッドモア科学担当大臣の標記講演内容を報じている。概要は以下のとおり。

ボリス・ジョンソン首相は、5年間で公的研究開発予算を2倍にすると約束した。これは、2027年までに官・民を問わずGDPの2.4%を研究開発に支出するという公約達成に向けた大きな飛躍である。これは、戦後の政府による単一の公的研究開発支出として最大の増加である。

しかし資金だけが問題ではなく、それをどう使うかが問題になる。どこに投資するかが等しく重要である。現政府は、将来の繁栄を分かち合う決意によって英国の隅々までその恩恵を受けることができるように、「レベルアップ」に取り組む「One Nation」政府である、と首相は宣言している。

科学とイノベーションのどちらでも、研究開発に関する「One Nation」戦略が必要である。

● 南北で対立している余裕はない

政府はすでに英国全体で多額の投資を開始している。しかし、この間、英国の他地域と比較して、公共投資から不均衡に利益を享受し続けている、いわゆる「ゴールデン・トライアングル」が存在していることも承知している。UKRIがこのほど公開したデータを見ると、研究開発国内総支出(GERD)の52%がロンドン、南東部、イングランド東部の地域に向けられている。たとえば北東部を見ると、1人あたりの研究開発投資のレベルは、同等のロンドン市民の半分以下である。

また別の調査によると、公共投資は民間投資に後れを取っている。ロンドンでは、政府支出は民間支出1ポンドに対して78ペンスである。しかし、ウェスト・ミッドランズでは民間投資1ポンドに対し、公共投資は僅か20ペンスである。

研究開発への公共投資を増やそうとしている今だからこそ、これらの格差に対処する機会があり、それをつかみたいと考える。歴史的に政府から投資が過小であったにもかかわらず、民間投資が自由に流れており、さらに速く流れる準備ができている場所に、より多くの公的研究開発資金が投入されるようにする必要がある。

しかし研究の卓越性と世界をリードする研究能力に投資することは言うまでもない。もう1つ重要なことは、研究開発資金を倍増するという歴史的な取り組みは、科学資金のゼロサム・ゲームに終止符を打てる可能性があるということである。数十年にわたって持続的かつ慎重に管理された既存の研究・イノベーション・エコシステムに対する投資をやめるつもりはない。

ある意味で、「ゴールデン・トライアングル」の物語は、コミュニティに対して地理的な制約を課すという、非常に役に立たないものである。真実は、研究者自身が常に全国での共同研究に長けているからである。従って現時点で機能している穀倉を潰すような誤った南北対立話が入る余地は全くない。2.4%目標の取り組みを補完し、最終的に達成するための真の「One Nation」研究開発戦略を策定する必要があるからである。

既存の研究機関および既存の大学における産業界と学術界とのパートナーシップにより、研究開発予算の倍増を実現する。

● 北部の研究開発パワーハウス

どう見ても北部には世界最高レベルの大学がいくつかある。これらの世界をリードする大学の集合的な能力は、その各々の大学を合計したものよりも大きい。それでも、さらに先へ進むことができると信じている。N8(北部の研究集約型大学のグループ)以外の機関に目を向けて、研究開発におけるそれらの機関の潜在能力の発揮を支援することができる。研究開発資金のレベルアップを図る場合、英国の隅々にある既存の能力を強化するだけでなく、研究能力を高めつつある大学や機関の新たな卓越性を支援することも重要である。これを達成するための資金と支援の提供を決めている。

● 企業主導イノベーションの段階的変革を達成する

産業界による投資の積み重ねも必要である。それには英国全体でイノベーションを経済再生の中心に据えることで、地域の復活を奨励する必要がある。代表的な例として「高価値製造カタパルト」がある。このカタパルトの比類のない製造の専門知識と研究開発能力が、新しい技術の機会と課題に対応する業界を支援し、いわゆる第4の産業革命を実現する。このカタパルトは、まさに成功のモデルであり、昨年だけでも4,500件以上のプロジェクトを支援しており、およそ2,500の中小企業を含む、あらゆる形態と規模の企業に利益をもたらしている。このカタパルトは、英国各地に7つの拠点を擁する。

● 21世紀の研究人材戦略

首相は、ビザ発給制度改革の野心的なパッケージを策定する意向をすでに表明しており、最優秀の人材が英国に来られるようにし、留学生がコースを終えた後も英国で生活し働き続けることができるようにする。しかし、それ以上にトレーニングに重点をおいて、英国全土の人々が第4次産業革命の機会をつかむことができるようにする必要がある。さらに、博士課程の研究から初期のキャリア研究、そしてリーダーシップの役割へと流れる人材の供給源を拡大する必要がある。今後10年間の研究人材戦略(Research People Strategy)、研究の実践と文化を変革するための新しい包括的なアプローチの開発を進めて行きたい。

[DW編集局]