[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2020/02/19
抄訳記事公開日:
2020/04/20

欧州のデジタル未来の形成:欧州委員会がデータ・人工知能戦略を発表

Shaping Europe's digital future: Commission presents strategies for data and Artificial Intelligence

本文:

2020年2月19日付欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり。

欧州委員会はこのほど、デジタル変革の構想と施策を明らかにした。デジタルは、気候変動との戦い、グリーン経済への移行達成に向けての成功の鍵となるものである。このほど提示された「欧州データ戦略」と人間中心の人工知能(AI)を確保するための政策オプションである「AI白書」」は、これらの目標達成に向けた最初のステップである。

● 信頼できるデジタル・リーダーとしての欧州

デジタル技術は、目的をもって使用されると、多くの点で市民や企業に利益をもたらす。欧州委員会は今後5年間、デジタルにおける次の主要3目標に焦点を当てる。

① 人に役立つ技術
② 公正かつ競争力のある経済
③ 民主的で持続可能な開かれた社会

新規の政策と枠組により、欧州は最先端のデジタル技術を展開し、サイバーセキュリティ機能を強化できる。欧州は引き続きオープンで民主的で持続可能な社会を維持し、デジタルツールはこれらの原則を支援できる。グローバルに競争力のある、価値に基づいた包括的なデジタル経済・社会となるべき独自の道を開発・追及する。一方で、オープンではあるがルールに基づいた市場であり続け、国際的なパートナーと緊密に連携する。

● 信頼できるAIにおけるリーダーとしての欧州

欧州は、優れた研究センター、安全なデジタル・システム、ロボット技術における確固たる地位のほか、(自動車からエネルギー、医療から農業に至るまで)競争力のある製造・サービス・セクターを備えている。このほど公表された白書で欧州委員会は、卓越性と信頼に基づく信頼できるAIの枠組みを描いている。官民セクターとのパートナーシップの目的は、バリュー・チェーン全体に沿ってリソースを動員し、中小企業を含めてAIの展開を加速するための適切なインセンティブを設定することにある。これには、加盟国および研究コミュニティと協力して、人材を引き寄せ、維持することが含まれる。AIシステムは複雑になりがちで、特定の状況では重大なリスクを負う可能性があるため、信頼の構築が不可欠である。明確なルールにより、リスクの低いシステムに過度の負担をかけることなく、リスクの高いシステムに対処する必要がある。不公正な商慣行に対処し、個人データとプライバシーを保護するために、厳格なEU消費者保護規則が引き続き適用される。

保健、警察活動、交通輸送のような高リスクの事案では、AIシステムは透明性があり追跡可能で、人間の監視を保証する必要がある。当局は、化粧品、車などをチェックする際に、アルゴリズムで使用されるデータをテスト・認証できる必要がある。高リスクシステムが適切に機能するように訓練し、基本的権利、特に差別のないことを保証するには、偏りのないデータが必要である。現在、遠隔生体認証のための顔認識の使用は一般的に禁止されており、保護措置の下でEU法又は国内法に基き、例外的な場合、公式に正当化された場合、又はそれらと同等の場合にのみ使用できるが、欧州委員会はどのような状況であればそのような例外が正当化されるのかについて幅広い議論を開始したいと考えている。

● データ経済のリーダーとしての欧州

企業や公的機関が生成するデータの量は常に増大している。産業データの次の波は、生産、消費、生活の方式を大きく変える。欧州は、世界で最も強力な産業基盤(中小企業は産業構造の重要部分)、技術、スキル、明確なビジョンなど、新たなデータ経済のリーダーとなるべき全ての資質を備えている。

欧州データ戦略の目標は、EUが模範を示すことで、データによって支えられる社会のリーダーの地位を確保することである。このため、データの単一市場としての真の欧州データ空間(European data space)を設定し、未使用データを解放することで、企業、研究者、行政の便益を図るべく、データがEU域内およびセクター間を自由に流れることを目指す。

各市民、各企業、各機関が、非個人データから得られた識見に基づいて、より適切な意思決定を下せるようにすべきである。そのようなデータは、公的であれ私的であれ、新興企業であれ巨大企業であれ、すべてが利用可能とすべきである。欧州委員会は上記を達成するべく、第1に、企業間、企業・政府間、行政機関内におけるデータのガバナンス、アクセス、再利用に関して、適正な規制枠組の確立を提案する。これには、データ共有に関するインセンティブを設けること、(個人データ保護、消費者保護、競争ルールなどの欧州の価値と権利に準拠する)データのアクセス・利用に関する実用的で公正かつ明確なルールを確立することが必要になる。これはまた、EU全体で高価値データ集合を公開して再利用できるようにすることで、公共部門のデータをより広く利用できるようにすることでもある。

第2に、欧州委員会は、EUおよびすべての関係者がデータ経済の機会を把握できるようにする技術システムと次世代インフラの開発支援を目指す。

第3に、工業生産、グリーン・ディール、モビリティ、保健などの分野で欧州データ空間を構築するべく、セクター毎の特定施策を開始する。

● 今後の予定

欧州委員会は今年後半にデジタル・サービス法と欧州デモクラシー行動計画を提示し、eIDAS 規制の見直しを提案し、共同サイバーユニットを展開してサイバーセキュリティを強化する。

[DW編集局]