[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2020/03/05
抄訳記事公開日:
2020/04/22

人工知能をがん治療に活用するAI研究プロジェクト

Karliczek: Künstliche Intelligenz für Krebsbehandlung nutzen

本文:

カルリチェク大臣が、がん治療に人口知能(AI)を活用する新たなAI研究プロジェクトを発表した。これに関して連邦教育研究省(BMBF)は概略下記のような報道発表を行った。

AIの活用により、既に数多くの医学領域において疾病の診断および治療が向上している。3月5日、カルリチェク大臣はベルリンにおいてがん治療に関する新しいAI研究プロジェクトを発表した。同プロジェクトはゲッティンゲン大学付属病院およびシーメンス・ヘルシニアーズ社(Siemens Healthineers)によって進められ、BMBFが助成する。これに関してカルリチェクBMBF大臣は次のように語った。

「AIは正しく利用されるならば、人間のためになる。AIは既に医学分野における診断の向上に大きく寄与している。とはいえBMBFにおいても、多くの試みがまだ初期的段階という状況であり、さらに研究されなければならないことを認識している。既に、医学におけるAI活用と取り組む、60以上のプロジェクトに9,000万ユーロを投資している。この未来投資を我々は今後数年間にわたり、できる限り拡大していく。

がんは、多くの研究プロジェクトで取り上げられる医学におけるAI応用が期待される分野である。「がん予防10か年計画」によって改めてこの疾病と闘うことを明言した。様々な種類および形態のがんがあったとしても、AIの活用によるがんの診断法や治療法の改善チャンスを、研究者が利用出来るように支援していく。

特別プロジェクトのCancer Scoutは、AIによる生検(デジタル・バイオプシー)が目標である。中核となるのは一種のがん細胞のプレスクリーニングで、AIによってコンピュータががん細胞を一定のグリッドにかけ、いわゆる分子サブグループに分ける。結果、がん患者を正確なターゲットを定めて治療することができる。こうしたアプローチはプレシジョン・メディシンに数えられるものである。BMBFは同プロジェクトを1,000万ユーロで助成しており、人々のために、どのようにアカデミアと産業界が連携しているかを示す好例である」。

ゲッティンゲン大学付属病院病理学部長のシュトローベル教授(Prof. Ströbel)は次のように強調した。「助成プログラムにより、我々は強力な産業界パートナーであるシーメンス・ヘルシニアーズ社と共に、プロセスの可能性とその限界を充分に検証する特別な機会を得て、臨床的なルーティンに関する全く新しい方法をパッケージとして開発することができる」。

シーメンス・ヘルシニアーズ社の新規ビジネス開発(New Business Development and Planning)のリーダーであるクリスチャン・ウルフラム氏(Christian Wolfrum)は次のように述べた。「この研究プロジェクトは各種のデータ源の利用とネットワーク化により、がん診断をより精密にし、改善するための臨床判断をサポートすることに寄与することを期待している。プロジェクトにおける我々の課題は、AIを活用し、がん治療の点で重要な、分子的変化を予知できるようにするため、治療で使えるように臨床的、遺伝子的、プロテオーム的データに基づいて、人工神経ネットワーク(artificial neural Network)をトレーニングすることである」。

背景:

毎年ドイツでは約50万人が悪性のがんに罹患している。ここ数年で、新しい非常に効果的な医薬品の開発が進み、多くのがんの治療を大きく改善させ、がんとの戦いにおいて全く新しいチャンスをもたらしている。Cancer ScoutプロジェクトによってBMBFはがんとの戦いの中にある医学に新たな手段を与える、大規模な、共同研究プロジェクトを進めることになる。

およそ1,000万ユーロで助成されるこのプロジェクトの主目標はAIの研究であり、AIによって「デジタル・バイオプシー」が、がん細胞内の分子変化を識別できるようにするものである。これによってがんは目標を絞った治療、またこれまでより遙かに短時間で治療出来る可能性が高まる。

[DW編集局]