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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 国立衛生研究所(NIH)
- 元記事公開日:
- 2020/03/04
- 抄訳記事公開日:
- 2020/06/01
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2021年度予算要求に関するNIH長官の議会証言
Testimony on the Fiscal Year 2021 Budget Request before the House Committee
- 本文:
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2020年3月4日付の国立衛生研究所(NIH)による標記発表の概要は以下のとおりである。
2021年度の大統領予算では、NIHの生物医学研究活動に387億ドルが計上されている。この予算では、個別化医療、オピオイド危機、HIV / AIDSなど、我が国の最大の医学的課題と機会に直面する生物医学研究を優先している。
生物医学研究における米国のリーダーシップを持続するには、安全で最先端の研究を促進するインフラと施設が必要である。NIHの施設には、入院患者用の病院のベッド、集中治療施設、手術室、バイオセーフティー収容施設、生物医学研究室、動物飼育施設、さらにはユーティリティ設備さえ含まれる。NIHにおける未着手の保守・修理費(BMAR)は現在約21億ドルである。2021年度予算では、3億ドルをNIHの施設整備に充て、NIHが所有するサイトで複数の生物医学研究インフラの優先事項を支援し、施設の劣化を防ぐ。
本予算では、2020年度~2021年度に1億ドルを割り当てて、未熟児の研究とケアを前進させる。米国で生まれた乳児10人に約1人が早産である。重篤状態の早産児の治療と健康回復を改善させるべく厳密な研究が不可欠である。NIHはまた、オピオイドに曝された乳児に対する最良の治療戦略を決定するべく臨床試験を支援する。さらに、妊娠・授乳期のマルチサイト臨床試験を支援する革新的な方法を探索し、これらの乳児の最適な臨床ケアの基礎を築く。
多数の米国民が、オピオイドの誤用、中毒、過剰摂取によって破滅に陥ってきた。NIHは、この危機に対する科学的な解決策をもたらし、慢性的な苦痛に苦しんでいる5,000万人以上の米国民に安全で効果的な選択肢を提供するべく、中毒を終わらせるための長期支援(HEAL)イニシアチブを開始した。2021年度予算は、5億3,300万ドルをHEALに充て、NIH全体のオピオイド・苦痛研究への合計14億ドルの投資を支援し、我々の社会の苦痛および依存症の危機に引き続き積極的に対応する。
オピオイドの入手可能性の低下により、一部の人々はメタンフェタミンやその他の覚醒剤などの代替薬を求めるようになった。本予算では、メタンフェタミンやその他の覚醒剤の使用を減らすための政府戦略を支援するべく、薬物支援治療とエビデンス・ベースの心理社会的治療の開発に追加で5,000万ドルを計上する。本予算では、米国の青少年の主要な病死因である小児がんの現状を転換するべく、小児がんデータ・イニシアチブに5,000万ドルを計上する。このイニシアチブでは、小児がんデータ・リポジトリ、医療システム、レジストリへの接続の構築、前臨床モデルおよび臨床データとのインタラクティブなデータ共有の確立、研究助成金の創設の促進・支援などを継続する。
本予算では、NIHが資金支援するAIDS研究センターに1,600万ドルを計上し、HIV新規感染のほとんどが発生している地域を含む各地において、予防と治療の統合的展開を企画・評価する。
流行性および新興のインフルエンザ・ウイルスは、米国および世界中の保健衛生に影響を与えている。毎年、季節性インフルエンザ感染症は世界中で約65万人の死者を出し、米国では最大5万6,000人の死者を出している。本予算では、インフルエンザ感染を診断、治療、予防し、将来のパンデミックから保護するための革新的な研究に4億2,300万ドルを充てることにより、改良ワクチンの開発を優先する。そのうち2億ドルを、毎年季節性インフルエンザ・ワクチンを更新して投与する必要のない、汎用ワクチン開発に充てる。
本予算では1億1,500万ドルを計上して、米国におけるダニ媒介疾患(ライム病など)の増加により引き起こされる公衆衛生の課題に対処する。報告された症例数は、2018年に過去最高の5万9,000症例を超えた。本予算により、ダニ、宿主、ダニに対する防御の間相互作用をより適切に理解するための基礎から臨床までの研究を通じて、治療を前進させる効果的なツール開発を加速させる。
本予算では、慢性疾患の根本的な原因をより深く理解し、効果的な早期治療法を特定するために、人工知能(AI)を最大限に活用するべく、5,000万ドルを計上する。慢性疾患の発症と進行に関連するデータの収集、統合、分析、解釈の強化に、AI、機械学習、深層学習の採用が期待される。
アデノ随伴ウイルス(AAV)は現在、遺伝子治療と遺伝子編集研究の両方で使用されている最も一般的なタイプのベクターである。本予算では、AAV生産のボトルネックに対処するためのコンソーシアム創設に3,000万ドルを計上し、遺伝子に基づく臨床試験を遅滞なく行えるようにする。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]