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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 財務省
- 元記事公開日:
- 2020/03/12
- 抄訳記事公開日:
- 2020/06/22
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2020年度予算(ポリシー・ペーパー)
- 本文:
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2020年3月12日付の財務省の標記発表から、主として科学技術・イノベーションに関わる部分を抜粋・要約して以下に記す。
● 概要
本予算は、COVID-19の世界的な大発生を背景に編成されている。COVID-19の影響を受ける可能性のある公共サービス、個人、企業を支援する計画を設定している。
経済は引き続き困難に直面しているが、政府の慎重な財政管理により、将来に投資しながら短期的に経済を支援することができる。本予算では、今後10年間の成長を支える道路、鉄道、デジタル・ネットワークへの投資のほか、国民が日々頼っている世界トップクラスの病院、学校、大学、警察への投資を発表している。
本予算はまた、研究開発および最先端技術への投資計画も設定している。連合王国のすべての国と地域の住民が経済の発展に応じて必要とする能力を獲得できるよう支援する。その結果として、国は次の10年の機会をつかむことができて、その潜在能力を発揮できる。
英国がCOP26国連気候サミットを主催する年に当たり、本予算では経済の化石燃料依存脱却と、英国の自然生息地の保護に向けた措置を講じ、英国経済全体が脱炭素化の課題に対応できるようにし、将来のグリーン・マーケットのリーダーとなる機会を活用できるよう備える。
● COVID-19への対応
公衆の安全は、COVID-19への対応において政府の最優先事項であり、最適な科学的証拠に沿って、確固たる包括的な行動を取る。政府は、COVID-19の発生に対する公衆安全および公衆衛生対応に重点を置くだけでなく、国民が自らの生活に及ぼす影響について懸念を抱いていること、企業が需要の減少や、サプライチェーンや輸出市場の混乱の可能性、そしてこの期間の労働力について懸念していることも認識している。
本予算では、(財政がCOVID-19の影響を受ける)公共サービス、個人、企業に対して120億GBPの支援計画を発表した。これには、50億GBPのCOVID-19対応基金が含まれる。この基金は、国民保健サービス(NHS)およびその他の公共サービスが、状況の進展に応じてCOVID-19の発生に対処し、その後回復して通常の状態に戻るために必要な資金の確保を可能にするものである。
個人の場合は、自己隔離を勧められている人、自己隔離している人をケアしている人向けの法定疾病手当(SSP)の延長、SSPを請求できない人向けの福祉制度や困窮基金による支援が含まれる。
政府はまた、コスト増やキャッシュフローの混乱を経験する企業を支援する。これには、ビジネスレート(事業用資産(店舗、事務所、倉庫、工場など)に対する固定資産税)の緩和拡大、中小企業への最大10億GBPの融資を支援する「コロナウイルス事業中断貸付制度」、中小企業向けの22億GBPの助成金制度、税負担の繰延期間が必要な者向けの専用ヘルプ・ラインが含まれる。
● 新技術・イノベーション支援
政府は、 2024~25年までに科学・イノベーション・技術への投資を年間220億GBPに増やす計画を設定している。
- 主要技術におけるリーダーシップ:政府は9億GBPを超える投資を行い、核融合、宇宙、電気自動車、ライフサイエンスなどの高度の潜在能力を有する技術とセクターにおいて英国企業のリードを確保する。
- ハイリスク研究機構:英国は短期的成果にとらわれない新規研究機構に8億GBP以上を投資する。
- 世界をリードする研究へのファンディング:政府は、2020~21年に最大4億GBPの追加投資を行い、英国全土で世界をリードする研究、インフラ、機器等を支援する。
- 数学研究:政府は2020~21年と2024~25年との間に3億GBPを投資する。
- 専門機関:政府は英国の主要な専門機関の支援に8,000万GBPを投資する。これには、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院、王立芸術大学、癌研究所などの組織が含まれる。
- 国防研究開発:政府は国防研究開発に1億GBPの追加投資を行う。これにより、航空・宇宙推進における最先端技術に対するファンディングなどで、英国が直面する脅威への対応能力が開発される。
- 国家安全保障戦略投資基金(NSSIF):政府はNSSIFにさらに5,000万GBPを投入する。政府は、英国を拠点とする主要なベンチャー・キャピタル・ファンドに投資するだけでなく、NSSIFプログラムを拡大し、英国の国家・経済の長期的な安全に貢献できる高度な技術を持つ企業に、民間セクターの共同投資家と共に直接投資する。英国ビジネス銀行は、British Technology Investments Ltd 社と呼ばれる政府系新会社を通じてNSSIFの直接投資を運用する。
- 動物衛生科学園:政府は、ウェーブリッジにある動物衛生科学インフラに10年間で14億GBPを投資し、英国の科学能力を強化しながら、現在および新たに出現する動物の病気の脅威から国家を防護する。
- 政府の科学的能力:分野横断的な戦略的科学能力を支援するべく、政府は2020~21年に200万GBPを政府主席科学顧問と政府科学庁に追加配賦する。
- 自然史博物館研究施設:本予算では、オックスフォードシャーのハーウェル科学・技術・イノベーション・キャンパスにある自然史博物館の新規・最先端のコレクション・研究・デジタル化センターに1億8,000万GBPの資本を投入する。
- 材料加工研究所:政府は、材料加工研究所を通じ,鉄鋼・金属セクターの研究・イノベーション支援に、ビジネスケースに応じて最大2,200万GBPをする。
- ライフサイエンス投資プログラム:本予算では、英国ビジネス銀行に(民間セクターの資本と合わせて投資される専用の新規株式投資プログラムに)2億GBPを提供することで、英国の最高の医療・ライフサイエンスのイノベーション支援に6億GBPの投資が可能になると期待されている。
- 知識資産の最大限活用:公共セクターは約1,500億GBPの知識資産(知的財産、技術、データ、その他の無形資産)を保有している。政府はこれらの資産からより多くの価値を引き出すことで、イノベーションと生産性の支援を考えている。政府は、公共セクターの革新的なアイデアに投資するための基金と、これらの機会を見つけて発展させるための新しいユニットを設立する。
- 経済データのより適切な活用:本予算では、新しく経済データの開発とより革新的なその使用を支援するべく、年間最大500万GBPの新規基金を発表した。
今回の画期的な投資は、研究者と革新的な企業に対するこれまでで最大かつ最速の支援拡大であり、研究開発の直接支援をGDPの0.8%にして、英国をOECD諸国の上位4位内(米国、日本、フランス、中国を上回る)に位置付ける。
政府の研究開発目標を達成するには、民間セクターからの投資が必要になる。その投資を後押しするために、政府は研究開発税額控除の率を上げ、データやクラウド・コンピューティングを含めるように適格支出の定義を拡大することについて協議する。
● 教育とスキル
- 継続教育投資資金:政府は5年間で15億GBPを用意して、これに継続教育カレッジ自身からのファンディングによる支援を受けて、イングランド各地にあるカレッジの施設を適切なレベルまで引き上げ、職業教育の質と効率を高めるための改善を支援する。
- 工科大学(Institutes of Technology):政府は1億2,000万GBPを用意して、(雇用主の協力を得て)イングランドの継続教育・高等教育提供機関による工科大学8校の新設を支援する。これら工科大学は質の高い高等技術教育の実施と地域間の技術差解消に活用される。
- Tレベルを支援する設備・機器:政府は、Tレベルの実施に向けて、高品質の施設・業界標準の設備に投資出来るように、イングランドのプロバイダーに対して9,500万GBP支給する。
- 国家スキル基金:政府は新規の国家スキル基金の活用法について今春幅広く協議する。
- 実習税(Apprenticeship Levy):政府は、大小の雇用主が経済の長期的なスキル・ニーズを満たせるように実習税の機能の改善方法について検討する。
- 実習:政府は、中小企業における新たな質の高い実習の件数の増加を支援するべく、2020~21年に十分なファンディングが利用できるようにする。
- 数学教育(Maths schools):政府は、あらゆる地域をカバーするイングランドの合計11校の数学スクールを支援するべく、追加で700万GBPを用意する。
[DW編集局]