[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2020/04/28
抄訳記事公開日:
2020/06/30

免疫系および抗生物質への耐性:腸内細菌表面多糖の役割

Résistance au système immunitaire et aux antibiotiques : le rôle d’un polysaccharide de surface d’une bactérie intestinale

本文:

2020年4月28日付国立科学研究センター(CNRS)の標記発表の概要は以下のとおり。

エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)は、院内感染や地域感染の原因となる消化管の日和見病原菌である。国立農業・食料・環境研究所(INRAE)とCNRSの研究者は、細菌の表面に存在し、免疫系への脱出に不可欠な分子の正確な構造を解明した。

エンテロコッカス・フェカーリスは腸球菌の1つであり、共生細菌であるが、人間や鶏などの一部の動物の感染症の原因となる重要な日和見病原体でもある。ヒトでは、例えば抗生物質療法中に、免疫不全の患者に尿路感染症や菌血症などの院内感染症を引き起こす。腸球菌はセファロスポリン(頻繁に処方されるクラスの抗生物質)に対して自然耐性がある。しかし、それらはまた、バンコマイシンなどの最終手段抗生物質に対する耐性を獲得する可能性がある。

これらの細菌はどのようにして免疫系に気付かれずに血液中に侵入するのか?免疫系は、細菌の表面に存在するパターンのおかげで、無害な細菌と病原性細菌を区別する。免疫系は、EPA(Enterococcal Polysaccharide Antigen)と呼ばれる糖の集まりで構成されるエンテロコッカス・フェカーリス表面分子を認識できないと言われている。このEPAは、消化管のコロニー形成、バイオフィルム(表面に付着した大量の細菌)の形成、抗生物質耐性、病原性に必要なものである。そのため、その役割をより正確に理解して対処するべく、その構成要素とその完全な構造を知ることが不可欠である。

生化学的手法と遺伝的手法を組み合わせることにより、INRAEとCNRSの研究者は、このEPAの完全かつ詳細な構造にアクセスすることに成功した。

[DW編集局+JSTパリ事務所]