[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立農業・食料・環境研究所(INRAE)
元記事公開日:
2020/06/02
抄訳記事公開日:
2020/07/22

Covid19 と家畜との関係:人間にとってのリスクは何か

Covid19 et animaux d’élevage : que savons-nous des risques pour l’Homme ?

本文:

2020年6月2日付国立農業・食料・環境研究所(INRAE)の標記発表の概要は以下のとおり。

コロナウイルス SARS-CoV-2 と家畜との関係について多くの疑問が提議されている。それについて現在分かっていることは何か?INRAEの動物衛生部門の責任者 Muriel Vayssier-Taussat 氏は、入手可能な科学発表論文に基づいて、2020年5月25日現在の知識の現状を列挙している。

● 元々、動物が保有源

SARS-Cov-2 ウイルスの遺伝子分析は、それが特定種のコウモリやセンザンコウに感染するウイルスに近いことを示している。これらのウイルス間の組換え(=遺伝物質の交換)の結果である可能性がある。センザンコウやコウモリで同定されたウイルスは人間に対する感染性はないが、この新型 SARS-CoV-2 ウイルスは、人間に感染して人間の集団内で伝染する能力を獲得している。

● SARS-CoV-2 に感染する可能性のある動物

家畜のゲノムにおけるウイルス受容体の存在の実証(および試験管内モデルでのウイルスによるそれらの認識)から、動物による実験的感染の試行、またはより直接的に動物における自然感染発生の検証に至るまで、いくつかの研究が実施されている。

  • ウイルスの「受容体」をコードする遺伝子の存在について分かっていること
    ウイルスの受容体は、細胞に存在する錠にたとえることができる。これは、ウイルスが保持している鍵(SARS-CoV-2の場合はスパイクプロテインまたはプロテインS)のおかげで、ウイルスが細胞に付着できるようになる。2020年3月19日に発表された記事では、特定の動物種(ブタやジャコウネコなど)が、SARS-CoV-2 ウイルスによって認識され、したがって感染しやすい受容体を持つことを示している。他の動物種(ネコなど)は、ウイルスが使用する受容体とは異なるが近似しており、さらに他の動物種(げっ歯類など)は非常に異なる受容体を持っているため、おそらくこのウイルスの影響を受けない。この研究により、特定の動物種の感受性を予測することは可能になったが、特定の種に感染するウイルスの能力を証明するものではない。実際、特定のウイルスから別の種のウイルスへの移行は、受容体の存在に基づくだけでなく、ウイルスの複製に必要な他の細胞因子の存在にも依存する。
  • SARS-CoV-2 ウイルスに対する家畜の感受性について分かっていること
    入手可能な研究結果には、研究室で実施された実験的感染、または自然感染の検知のいずれかがある。各動物種については、国際感染症学会のウェブサイト(https://promedmail.org/)を介してそれらの結果が公開または報知されている。

● 世界中の食肉処理場で汚染「発生」が検知されている理由

特定の種のイタチ科を除いて、家畜がウイルスに感染しにくいとすれば、非常に多くのCOVID19 の発生がなぜフランスを含む世界中の食肉処理場に現れるのかという疑問が生じる可能性がある。これらの多様な発生源で行われた疫学研究はすべて同じ結論に収束している。すなわち、ウイルスは動物ではなく感染した人間によって媒介されている。

● 上記食肉処理場の肉がウイルスの媒介者となり得ないことの確認は可能か

理論的には、感染した人から食物(肉または他の食物)へのウイルスの移動は、感染した飛沫を介して発生する可能性があり、洗浄作用がなければ、コロナウイルス科のウイルスは最大9日間存続する。特に気温が低く、空気の相対湿度が低い場合が報告されている。

ただし、消化管によるSARS-Cov-2 の伝染はこれまでに実証されておらず、調理(63°Cで4分)は食品中のコロナウイルスの不活化に効果的であると考えられている。したがって、直接の消化経路伝染が起こる可能性は低いと思われる。

[DW編集局+JSTパリ事務所]