[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)
元記事公開日:
2020/05/26
抄訳記事公開日:
2020/07/30

「高等教育・研究・イノベーションの現状」2020年度版の発表

Publication de l'édition 2020 de l'état de l'enseignement supérieur, de la recherche et de l'innovation

本文:

高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)は2020年5月26日付で標記文書を発表した。本文書の中から研究・イノベーションに関する部分を抜粋要約して以下に記す。

● 発表論文を通じて見る世界におけるフランス科学研究の地位

他の研究大国と同様に、新たな科学大国の出現により、世界の発表論文に占めるフランスの割合は減少している。2018年は世界の発表論文への関与で見るとフランスは第6位(2.8%)である。フランスの発表論文のインパクト係数(1.01)は、主要15か国中第8位にある。国際的な共著の割合(62.5%)は、英国と同等で、ドイツより優位にある。EU諸国と米国が主要な科学研究パートナーである。

● Horizon 2020 への参加を通じた欧州研究圏におけるフランス

2014年の Horizon 2020 プログラム開始以降、フランスは欧州の研究・イノベーション向け予算の第3の受益国(52億ユーロ)である。原子力・宇宙研究が主要領域を構成している。ドイツ、英国、スペイン、イタリアが主要パートナーである。

● 発表論文を通して見るフランス科学研究の特徴

フランスは数学に関する高い専門性により、ドイツ、英国、イタリア、米国、日本、中国を凌ぐ。フランスの発表論文における医学研究が占める割合は、ドイツと同等の世界平均であるが、イタリアや米国を下回っている。フランスのインパクト係数も、分野によって異なる。

● フランスの技術の地位

2018年、フランスは欧州特許庁への特許出願で第4位(出願数の6.2%)を維持した。欧州特許庁におけるフランスの国際共同発明の割合は17%で、ドイツのそれより優位にある。フランスの特許は、輸送、有機ファイン・ケミストリ、機械構成部品、その他特殊機械、化学工学の技術に集中している。

● フランスのイノベーション企業

フランスに拠点を置く従業員10人以上の営利企業のうちのほぼ過半数が2014~2016年の間イノベーションを果たした。イノベーション企業の73%を占める情報・通信セクターが最も革新的である。イノベーション企業の割合は、その規模と特定グループへの所属に伴って大きくなる。

● イノベーション新興企業

研究開発業務を実施する中小企業の創業・発展を促進する目的で、新興イノベーション企業(JEI)資格が創設された。2017年、その国内研究開発支出は10億5,100万ユーロ(額で前年比20%増)に達したが、主としてサービス部門が関与している。

● イノベーションに向けた官・民協力

公的研究への民間資金支援(2016年は5.2%)や公的研究に応募するイノベーション企業参加割合(2014~2016年で17%)に関連する産学提携研究のフランスにおける展開は、比較的乏しい。他方、公的研究と企業との間の共同特許申請の割合(2016年の欧州特許出願の2.5%)では、フランスは他のOECD諸国に先んじている。

● 研究・開発の人的資源

2017年には618,600人がフランスで研究開発業務に従事しており、そのうちの3分の2が研究者で、残り3分の1が研究支援要員である。女性は研究要員全体の32%で、研究者では28%である。研究者10人中6人が企業での研究に、4人が行政機関での研究に従事している。

● 企業における研究者

2015年、フランス国内では約22万7,000人の研究者が企業で研究を行っている。この集団はかなり若手で、女性は少なく(20%)、大半が理工系グランゼコールの出身である。研究者の12%が博士号取得者で、17%が修士である。

● フランスの研究開発努力

  • 総研究開発費(使用額) 506億ユーロ(2017年)、518億ユーロ(2018年予測)
  • 総研究開発費(支出額) 543億ユーロ(2017年)
  • 総研究開発費(使用額)の対GDP比 2.21%(2017年)、2.20%(2018年予測)
  • 政府の国内研究開発費 176億ユーロ(2017年)
  • 企業の国内研究開発費 330億ユーロ(2017年)

● 国内研究開発支出

2017年は、2016年と同様、研究6部門(自動車、航空・宇宙、製薬、科学・技術専門業務、情報処理・情報サービス業務、化学)に企業の国内研究開発支出の半分が集中している。公的セクターでは、研究機関が政府の国内研究開発支出の53%を実行している。

● 公的機関の研究支出

2017年、主要公的研究機関の国内研究開発支出は92億ユーロに達し、額で前年比0.4%の伸びとなった。公的研究の53%を実施するこれらの機関は、フランスにおける研究の主要実行機関である。総額58億ユーロの国内研究開発支出により、国立科学研究センター(CNRS)と原子力・代替エネルギー庁(CEA)民需部門が公的研究の約3分の1を実行している。

● 中小企業、中堅企業、大企業における研究開発

2017年、中小企業(零細企業を含む)は企業の国内研究開発費の18%を実施した。これら中小企業はその支出の半分以上をサービス業務に充てている。大企業は企業の国内研究開発費の約60%で、高・中度のハイテク産業において、その研究努力の4分の3を実施している。

● 新材料・ナノ技術における研究開発の動き

フランスでは2017年、新材料及びナノ技術の領域において、研究開発に積極的な企業5社中少なくとも1社が国内研究開発費を促進している。この2つの領域に関連するグローバルな研究支出は、2017年には35億ユーロに達し、企業の国内研究開発費の10.5%となった。新材料に関するこの支出は研究開発費全体の8%を占め、ナノ技術の領域に関しては3%弱を占める。

● 環境に関する研究

2017年、直接又は間接的に環境に充てられた研究開発費は、57億ユーロと査定され、これは国内研究開発費の11%になる。エネルギーと輸送以外で、環境に関する研究開発支出の60%を在仏企業が担っている。

● 農業に資する研究開発

フランスでは2017年、農業研究開発支出が研究開発費全体の4.6%を占め、23億ユーロとなっている。企業セクターと公的セクターが、この研究開発費をほぼ同等に分担している。

● 企業におけるバイオテクノロジーの研究開発

バイオテクノロジーに関する企業の国内研究開発費は、2017年に29億ユーロ(約9%)に達した。この領域に積極的な研究開発企業の割合は、2017年は11%台である。

● 医薬研究におけるフランスの科学・技術上の地位

最近の10年間、医薬に関する科学研究は、新興国、とりわけ中国の論文生産の大幅な伸びに特徴がある。世界の発表論文の2.4%を占めるフランスは、この研究領域に特化されてはいない。上位10%内にあるフランスの活動指数は、世界平均を少々上回っている。医薬に関する技術研究は米国が支配的で、そこに新興国が強力に食い込んでいる。フランスは特許出願で5%のシェアを維持している。

[DW編集局+JSTパリ事務所]