[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国立科学財団(NSF)
元記事公開日:
2020/05/18
抄訳記事公開日:
2020/08/03

NSFとOSTPが、量子教育のための重要リソースの開発を目的とした共同取り組みを開始

National Science Foundation and White House Office of Science and Technology Policy initiate collaborative effort to develop critical resources for quantum education

本文:

2020年5月18日付の国立科学財団(NSF)による標記発表の概要は以下のとおりである。

NSFおよび大統領府科学技術政策局(OSTP)は、量子情報科学・技術の進歩に必要な資質を備えた労働力の教育、育成、保持に積極的に取り組んでいる。

NSFは、OSTPと緊密に連携して、ハーバード大学の統合量子材料センター(CIQM)が主催する仮想ワークショップを支援した。「将来の量子情報科学学習者にとっての主要概念」と題されたワークショップは、学生が量子情報科学(QIS)に取り組む場合に役立つ今後のカリキュラムと教育者の活動に不可欠な概念を特定するべく企画されたものである。

ワークショップの結果、今後のQIS学習者にとっての主要概念のリストが作成された。この文書には、量子もつれ、量子通信、量子センシングなど9つの基本概念の簡潔なリストが示されている。

上記文書は、大学・産業界の研究者、高校および大学の教育者のほか、教育・専門組織の代表者の間での3週間以上にわたる集中的な審議の産物である。参加者は、今日のQISに貢献する一連の分野を代表している。物理学、コンピューター科学、材料科学、工学、化学、数学などである。

概念リストは、教育・研究界、政府省庁によって広く期待されている。量子教育および労働力開発に対する新たな焦点は、OSTPに端を発した国家量子イニシアチブ(NQI)の主要優先課題である。概念リストは、量子教育カリキュラムの開発に向けて最初の重要なステップを提供し、教育者に幼稚園から高校までのクラスで量子の概念を教える力を与える。

● 今後のQIS学習者向けの9つの主要概念

  • 量子情報科学(QIS)は、量子の原理を利用して、情報の取得、エンコード、操作、適用の方法を変革する。量子情報科学は、量子コンピューティング、量子通信、量子センシングを網羅し、科学技術のその他の進歩を促進する。
  • 量子状態は、原子などの物理系の数学的表現であり、量子情報を処理するための基礎を提供する。
  • 量子アプリケーションは、壊れやすい量子システムを(人の監視がなくても)注意深く操作して、最終測定において意図した結果が提供される確率を高めるように設計される。
  • 量子ビット(qubit)は、量子情報の基本単位であり、光の偏光状態、原子のエネルギー状態、電子のスピン状態などの物理系でエンコードされる。
  • 複数量子ビット間の不可分な関係である量子もつれは、ほとんどのQISアプリケーションで量子の利点を獲得するのに必要な量子システムの重要な特性である。
  • 量子情報アプリケーションを成功裏に遂行するには、壊れやすい量子状態を維持するか、またはコヒーレント状態を保つ必要がある。
  • 量子ビットと量子演算を使用する量子コンピューターは、古典コンピューターよりも効率的に特定の複雑なコンピューティング問題を解決する。
  • 量子通信は、量子もつれ又は光ファイバーなどの伝送チャネルを使用して、異なる場所間で量子情報を転送する。
  • 量子センシングは、量子状態を使用して、量子力学で可能な最高の精度で物理特性を検出・測定する。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]