[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2020/07/24
抄訳記事公開日:
2020/09/30

欧州委員会が2020年~2025年のEU安全保障連合戦略を発表

EU Security Union Strategy: connecting the dots in a new security ecosystem

本文:

2020年7月24日付欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり。

欧州委員会はこのほど、2020年~2025年の間の新たなEU安全保障連合戦略を打ち出した。欧州に居住するすべての市民の安全保障の確保において、EUが加盟国支援に価値をもたらすことができる優先領域に重点を置いたものである。テロや組織犯罪との戦いから、ハイブリッド脅威の防止と検出、重要インフラの回復力の向上、サイバーセキュリティの促進、研究・イノベーションの促進に至るまで、本戦略は、我々の物理的環境やデジタル環境における安全保障を確保するべく、今後5年間で開発すべきツールや対策を提示する。

本戦略では、EUレベルの施策として次の4項目の戦略的優先課題を掲げている。

● 将来を見据えた安全保障環境

個人は、オンラインでもオフラインでも、旅行や仕事または基本的な公共サービスの利用において、主要なインフラに依存している。そのようなインフラへの攻撃は、大きな混乱を引き起こす。備えと回復力が、迅速な回復の鍵になる。欧州委員会は、物理的およびデジタル的に、重要インフラの保護と回復力に関して新しいEU規則を提案する。

最近のテロ攻撃は、礼拝所や交通の要所など公共スペースに焦点を当てており、オープンでアクセス可能な性質を利用している。欧州委員会は、公共の場所の物理的保護を強化し、適切な検出システムを確保するために、この分野における官民協力の強化を促進する。

サイバー攻撃は、ますます頻繁で手の込んだものになる。欧州委員会は年末までに、EUが進化する脅威を予測して対応できるように、ネットワーク・情報システム指令(欧州の主要なサイバーセキュリティ法)のレビューを完了するとともに、戦略的なサイバーセキュリティの優先課題を提示する必要がある。

さらに、欧州委員会は、組織化・統括された協力体制向けプラットフォーム「共同サイバーユニット」の必要性を確認している。

EUは、サイバー攻撃のさらなる防止、抑止、対応のために強力な国際パートナーシップの構築と維持を継続するほか、パートナー諸国のサイバーセキュリティを強化するEU規格を推進する必要がある。

● 進化する脅威への対処

犯罪者はその目的にますます技術開発を利用しており、マルウェアやデータの盗難が増加している。欧州委員会は、サイバー犯罪に対する既存のEU規則が目的に適合し、正しく実装されていることを確認し、個人情報の盗難に対する対策を模索する。

欧州委員会はデジタル関係の調査における法執行能力を強化するための措置を検討し、それらが適切なツール、技術、スキルを備えていることを確認する。これには、安全保障政策における人工知能(AI)、ビッグデータ、高性能コンピューティングが含まれる。

基本的人権の尊重を確保する枠組みの下で、テロ、過激主義、児童の性的虐待などの市民に対する主要な脅威に対処するための具体的な施策が必要とされる。

社会的結束を弱め、制度への信頼を損なうことを目的とするハイブリッド脅威に対抗し、EUの回復力を高めることは、安全保障連合戦略の重要な要素である。主要な対策には、早期発見、分析、認識、回復力と防御の構築から、危機対応や影響管理に至るまで、ハイブリッド脅威へのEUの対処方が含まれる。

欧州委員会と上級代表は、NATOやG7を中心とする戦略的パートナーとの緊密な協力の下、共同でこの作業を進めていく。

● テロや組織犯罪からの欧州市民の防護

テロとの戦いは、社会の二極化、差別、および(急進的な言説に対する人々の脆弱性を増長させる可能性のある)その他の要因に取り組むことから始まる。過激主義に対抗する研究では、リハビリテーションと社会への再組み入れのほか、早期発見、回復力の構築、解放にも焦点を当てる。根本原因と戦うことに加えて、外国のテロリスト戦士を含むテロリストの効果的な告発が不可欠である。これを達成するべく、国境安全保障法を強化し、既存のデータベースをより適切に使用するためのステップが進行中である。EU以外の国や国際機関との協力も、テロ資金のすべての資金源を遮断するなど、テロ対策の鍵となる。

組織犯罪は犠牲者と経済に莫大な損失をもたらし、毎年2,180億ユーロから2,820億ユーロが失われると推定されている。主要な対策には、来年に向けて(人身売買を含む)組織犯罪に対処するための計画が含まれる。EUで活動する組織犯罪グループの3分の1以上が違法薬物の売買に関与している。欧州委員会は、薬物の需要と供給の削減への取り組みを強化し、外部パートナーとの協力を強化すべく、薬物に関する新たなEU議題を提案している。

組織犯罪グループやテロリストはまた、銃器の違法取引においても重要な役割を果たしている。欧州委員会は、銃器の売買に対する新たなEU行動計画を提示している。欧州委員会は犯罪者の資産の押収に関する現在の枠組みを見直す。

犯罪組織は、国際的な保護を必要とする移民や人々を商品として扱う。欧州委員会は、犯罪ネットワークとの闘い、協力の強化、法執行機関の活動支援に焦点を当てた移民密輸に対する新たなEU行動計画をまもなく提案する。

● 強力な欧州安全保障エコシステム

EUは、犯罪と戦い、正義を追求することを目的として、協力と情報共有の促進を支援する。主要な措置として、欧州刑事警察機構(Europol)の権限を強化すること、および司法当局と法執行当局をより適切に結び付けるために欧州司法機構 (Eurojust)をさらに発展させることが含まれる。EU以外のパートナーと協力することも、情報と証拠を確保するために重要である。国際刑事警察機構(Interpol)との協力も強化される。

研究・イノベーションは、脅威に対抗し、リスクと機会を予測するための強力なツールである。Europolの権限の見直しの一環として、欧州委員会は域内安全保障を目的とした欧州イノベーションハブの創設を検討する。

スキルと意識の向上は、法執行機関と市民の両方に利益をもたらす。安全保障の脅威に関する基本的な知識とその対処方法でさえ、社会の回復力に大きな影響を与える可能性がある。サイバー犯罪のリスクに対する意識、およびサイバー犯罪から身を守るための基本的なスキルは、サービスプロバイダーによる保護と連携して、サイバー攻撃に対抗することができる。2020年7月1日に採択された「欧州スキル・アジェンダ」は、セキュリティの分野を含め、生涯を通じたスキル構築を支援する。

[DW編集局]