2020年7月30日付で技術アカデミーは、標記報告書を公表した。その概要は以下のとおり。

技術アカデミーはエコロジー移行と産業開発のための水素の主要な課題を提示する報告書で、4つのテーマにグループ化された14項目の提言を発している。

CO2排出量の大幅削減、さらには2050年までにカーボン・ニュートラルという目標により、フランスを含む多くの国でカーボンフリー水素の生産に新たな関心が集まっている。この水素の新しい用途は、産業における炭化水素の代替、天然ガス網への最大20%の注入、メタン又は液体燃料への変換（e燃料、特に航空輸送用の合成燃料）、定置型（エコ区域や建物に供給）又は車載型燃料電池（PAC）での変換による発電などが検討されている。水素は、間欠的な太陽エネルギーや風力エネルギーの貯蔵媒体として言及されることもある。原子力の使用を除いて、フランスでのカーボンフリー水素の生産能力は限られているので、これらの異なる用途は互いに競合する。

技術アカデミーでは、生産、貯蔵、流通、関連するリスクの問題を分析して、有望な用途を推定し、例えば最終的に発電が目的の再生可能エネルギー由来の水素の大規模貯蔵の経済性、実現可能性の基準を明確にする。

提言の主たる内容は次のとおりである。

● CO2の1トンあたりの回収コストを考慮しつつ、水素の利用を優先し促進する

• CO2を排出する集中型生産に取って代わる、広範な工業用途を狙った電気分解による水素の分散型生産を優先的に確保する。
• 安全確保の問題に留意しながら、各地域の主要都市に装備することで、大量輸送や都市および周辺区域の車両向けに水素の使用を展開する。
• カーボンフリー水素のガス網への注入を促進することで、需要を支え、生産における規模の経済から利益を得られるようにする。
• 特に相互接続されていない地域（ZNI）のエネルギー供給に向けて、100%の水素貯蔵・分配システムの産業用実証試験を展開する。

● 有利な政策的枠組みを構築する

• 国内各地で開始される実証試験運用の一貫性を確保する。
• システム分析システムおよび（電力部門とガス部門の結合など）全体的なシナリオを開発する。
• 欧州レベルでの基準と規制策定を推進することにより、水素の安全使用を確保する。
• EUでは、製造中のCO2排出量に基づいた、欧州レベルでの水素の原産証明を確立する必要がある。

● フランスおよび欧州の水素チェーン産業の振興を図る

• フランスおよび欧州の電解槽／燃料電池産業セクターの既成で活発なエコシステムからの自発的な振興を図り、株式投資、株式支援、償還可能な援助、キャッシュフロー援助を増やすことにより、セクター全体の企業を支援する。
• 国際的な規模のフランスのプレーヤーが連携する再結成／ CCUSによる生産を無視しないこと。
• 主要な成果がアジアや北米で生産された機器の輸入によるものにならないよう留意しつつ、実証試験運用を有効活用する。

● フランスおよび欧州の研究開発の取り組みの拡大を通じて未来に備える

• セクターの立ち上げとグローバルな目標を持つ産業グループの出現を支援するべく、特に成熟レベルが中程度の技術に関する研究開発を強化する。

[DW編集局+JSTパリ事務所]