[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国務省(DOS)
元記事公開日:
2020/08/18
抄訳記事公開日:
2020/10/19

国務省が米国各大学理事会に対し中国の影響について注意喚起

Letter From Under Secretary Keith Krach to the Governing Boards of American Universities

本文:

2020年8月18日付の国務省(DOS)による標記発表のうち、以下に科学技術関係部分の概要を示す。

国務省における主要なミッションの1つに、世界中で学問の自由を含む自由を監視し、擁護することがある。このミッションにおいて、米国の高等教育機関は常に国務省のかけがえのないパートナーであった。特に現在は、パンデミックがもたらした無数の課題に協力して取り組んでいるところであり、その結果、引き続き世界中から米国に学生を迎え入れることができる。これには、世界中の大使館や領事館での状況に応じて、学生ビザの発行を整然と再開することが含まれる。

かかる精神から、学問の自由の確保、人間の尊厳の尊重、大学基金の保護、知的財産権の保護に幅広い影響を与える現実的かつ緊急の脅威について伝達する。我々の懸念は、中国国民や米国にいる圧倒的多数の中国人学生ではなく、中国共産党(CCP)と特定の個人の悪意ある行動にある。我々の目標は、米国と中国の学者がより大きな信頼をもって連携することができる、オープンで改善された透明な環境である。米国の技術と制度を保護し、国家および経済の安全を確保し、外国の干渉を受けないようにするべく、我々は米国高等教育機関の支援を求めるものである。

● 学問の自由の確保
国務省は8月13日、米国のキャンパスへのCCPの浸透に関して透明性の光をあてるべく、孔子学院米国センター(CIUS)を中華人民共和国(PRC)の管理下にある外交使節団に指定した。米国の多くの大学が、孔子学院の拠点となっており、PRCによって部分的に資金支援を受けたり管理されたりしている。米国大学教授協会が2014年の報告書で指摘しているように、孔子学院は中国の国家機関として機能し、学問の自由を無視することが許可されている。

上記指定は米国の大学を対象としたものではないが、各大学理事会に対して、学内での孔子学院の活動を注意深く調査し、学問の自由、制度的自治、透明性、クリーンな資金支援慣行が維持されていることを確認するよう要請する。

● 知的財産権の防護
米国政府機関は、中国の違法な研究資金支援、知的財産の窃取、人材の採用に関して、米国の大学での調査を加速している。司法省は今年初め、ハーバード大学化学学部の元学部長を「千人計画」への参加について虚偽の申し立てをし、3年間で225万ドルの支払いを受けたことを開示していなかったとして起訴した。また7月には、NASAの研究資金を受給していながら「千人計画」に参加していたことを開示していなかったとされるアーカンソー大学教授に対して42件の告発を行った。

米国の科学コミュニティは、優秀な人材だけでなく、最も価値のある知的財産も外国の競争相手から狙われている。米国は、互恵性、公正性、メリットに基づく競争、透明性といった価値観を基に、研究大学の成功を築き上げてきた。これらの価値観は、アイデアの自由な交換を促進し、最も厳密な研究成果の開花を促進することで、研究者が自身の知的財産の利益を享受できるようにする。その結果、米国は最も優秀な人材を惹きつけている。

ところが、PRCは、軍事と民事の融合における独自の取り組みを加速するなど、200件以上の人材採用計画を通じて外国の専門家を採用するべく、十分な資金による政府全体のキャンペーンを実施して、米国のオープン性を不当に利用しようとしている。2017年の時点で、中国は、最先端の研究・技術に重点を置いているか、アクセス可能な研究者を7,000人採用したと伝えられている。CCPにとって、国際科学協力は科学を進歩させることではなく、中国の国家安全保障上の利益の促進のためにある。

各大学の理事会が、PRCによる吸収・転用や潜入から研究システムを保護することにより、この脅威に迅速に対処することが最も重要である。また、金銭的利益相反や外国の資金源についても精査する必要がある。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]