[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2020/09/03
抄訳記事公開日:
2020/11/09

NASEMがヒトゲノム編集の臨床使用に関する報告書を公表

Heritable Genome Editing Not Yet Ready to Be Tried Safely and Effectively in Humans; Initial Clinical Uses, If Permitted, Should Be Limited to Serious Single-Gene Diseases

本文:

2020年9月3日付けの全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記記事の概要は以下のとおりである。

香港で開催された2018年ヒトゲノム編集に関する国際サミットの余波を受けて結成された全米医学アカデミー(NAM)、全米科学アカデミー(NAS)、英国王立協会による国際委員会が、新たな報告書を公表した。

同委員会は、ゲノム編集技術、ヒト遺伝学とゲノミクス、心理学、生殖・小児科・成人医療、規制科学、生命倫理、国際法などの専門知識を持つ10カ国18名のメンバーで構成されており、遺伝性ヒトゲノム編集の臨床応用の可能性を評価する際に、科学者、医師、規制機関が考慮すべきフレームワークを開発することを任務としている。

本報告書は、世界保健機関(WHO)のヒトゲノム編集に関する専門家諮問委員会に情報を提供するものであり、同委員会は、遺伝性および非遺伝性ヒトゲノム編集研究と臨床利用の両方に適切なガバナンスメカニズムを開発している。WHO諮問委員会は今年後半にガイダンスを発表する予定である。

同報告書は、ゲノム編集されたヒト胚を、不適切な変化を引き起こさず、正確な変化を確実に行うことができる手法が確立されるまでは、妊娠のために使用すべきではないと述べている。また、遺伝性ヒトゲノム編集(HHGE)の容認にあたり、単一遺伝子の片方または両方のコピーの突然変異に起因する重篤な単発性疾患の予防に限定されるべきであり、両親の遺伝的事情や生殖能力の問題が重なって、編集なしで遺伝的に影響を受けていない子供を持つための選択肢がないか、または、極めて望みが薄い場合にのみ、HHGEを考慮すべきである、と述べている。

また、現時点におけるHHGEの他の潜在的な用途について、研究から臨床応用までの責任あるトランスレーショナル・パスウェイを定義することはできない、と述べている。HHGEの研究や実施を行っているすべての国は、潜在的な臨床使用に向けた進捗状況を監視し、未承認の使用を防止し、不正行為を制裁するためのメカニズムと規制機関が設置されるべきである、とも報告書は述べている。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]