[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2020/09/21
抄訳記事公開日:
2020/11/11

環境に優しい産業:二酸化炭素と水素を持続的化学物質の原料として活用

Für eine klimafreundliche Industrie: Kohlendioxid und Wasserstoff als Rohstoffe für nachhaltige Chemikalien nutzen

本文:

エボニック社 (Evonik)およびシーメンス エナジー社(Siemens Energy)が実験プラントを稼働させることとなり、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)はこれに関して概略下記のような報道発表を行った。

両社は9月21日BMBFが助成する二酸化炭素と水を化学物質の製造に利用するプラントの運転を開始した。必要なエネルギーは再生可能エネルギー源からの電力を利用する。同設備は北ルール地方のマルルにあり、その人工光合成の革新的技術によりエネルギー転換の成功に寄与することになる。これは研究プロジェクト“Rheticus I”およびIIの主要部分であり、BMBFは合計630万ユーロでこれを助成している。

マルルでの運転開始に当たりカルリチェク大臣は次のように発言した。
「本日マルルにおいて最高レベルの新実験プラントにゴーサインが出されたことは、誠に喜ばしい。“Rheticus”によって化学的な生産プロセスを環境に優しいものとし、同時に新しい革新的な製品を造り出すことができることを明らかにする。これはドイツだけでなく、全世界でのポテンシャルを有しており、ドイツの技術輸出に大きな可能性を開いてくれるものである。地球温暖化対策を有効に前進させ、将来もドイツを強力な産業拠点としていきたい。私は、両方とも達成できることを確信している。BMBFは、この目標を念頭に置き、総額630万ユーロをこの新しい設備に投資し、関係者全員に多大な成果を祈念するものである」。

連邦議会議員、グリーン水素イノベーション担当委員のステファン・カウフマン氏は次のとおり強調した。
「特別化学物質の製造を目標とする“Rheticus”実験設備の本日の稼働開始は真のパイオニア的業績である。革新的技術によってのみグリーン水素経済が成功するからである。そのためには勇気と研究者魂が必要である。“Rheticus“におけるプロジェクトパートナーはこのことを模範的に証明することになる」。

エボニック社の副会長取締役兼イノベーション担当役員ハラルド・シュワガー氏は、「化学なしには気候保護は達成できない。何故ならば、我々の分野がエネルギー転換のための問題解決策を開発し提供するもので、“Rehticus“のような研究プロジェクトはより持続的な社会に向けたモチベーションとイノベーションの原動力である。」と語った。同時にクルマン氏は脱化石エネルギーにおける、その速度への心得についてこう警告を発している。「政治的決断における信頼性と供給の確保が新たなものを生みだす枠組みを設定する」。

シーメンス エナジー社CEOのクリスチャン・ブルッフ氏は、
「我々の目標は革新的技術によって新たな、より持続的な解決策を可能にすることである。水素・CO電気分解によって、グリーン電力と持続的資源利用との間に架け橋を築く。そのためには政界、学界と、エボニック社のような経済界のパートナーがアライアンスを組むことが重要な一歩となる」と述べた。

背景:

研究プロジェクト“Rheticus“は、連邦政府のエネルギー転換に関する最大の研究イニシアチブの一つであるBMBFのコペルニクスプロジェクトからスピンオフしたものであり、どのようにしてPower-to-Xアイデアを実用化できるかを証明するものである。

Rheticusプラントの背景にある人工光合成のアイデアに関して、研究者は自然をそのモデルとしている。例えば植物が、太陽エネルギーを利用して、二酸化炭素(CO2)と水からいくつかのステップを経て糖を造り出すように、Rheticusでは、バクテリアの助けを借りた電気分解を通じて、CO2と水から貴重な化学物質を造り出すために再生可能エネルギーを利用する。この種の人工光合成はエネルギー貯蔵庫として機能し、炭素サイクルをクローズし、大気の炭酸ガス負荷を軽減することに寄与する。

拠点はエボニック社の最大の拠点であるマルルに置かれた。シーメンス エナジー社が開発したCO電気分解装置と、エボニック社の専門知識による水電気分解装置およびバイオリアクターから構成されている。

第一ステップでは、CO2と水は電解槽で一酸化炭素(CO)と水素(H2)に変換される。当面は研究目的であるが、特殊な微生物が、この合成ガスを利用して特別なガスを造り出す。例えば特殊プラスチックあるいはサプリメント等の前駆物質である。

今後数週間をかけて、合成ガスの合成および電気分解と発酵の組み合わせが最適化される。加えて純粋な化学物質を得るため、バイオリアクターから液体を処理するためのユニットが構築される。

現在のRheticusプロジェクトフェーズ(Rheticus II)の成功後エボニック社とシーメンス エナジー社はCO2から特殊化学物質あるいは人工燃料のようなエネルギーや価値のある物質を(モジュラーでフレキシブルに)製造できるこれまでに類を見ないプラットフォーム技術を持つことになる。

「Power-to-X」領域におけるBMBFの活動に関して
BMBFは2019年にエネルギー研究助成のため5億ユーロ強を用意した。「Power-to-X」技術はエネルギー研究におけるBMBFの活動の中心的領域である。

そこでの中心要素はBMBFのコペルニクスプロジェクト「P2X」であり、「Rheticusプロジェクト」はそれからスピンオフしたものである。プロジェクト「P2X」はグリーン水素の製造・輸送(Power-to-Gas)のほか、ガソリンスタンド、暖熱用ストーブ(Power-to-Heat)、化学物質(Power-to-Chem)、プラスチック生産(Power-to-Plastics)等における水素利用を調査する。その他「P2X」は合成ガスを用いて気候に優しい合成燃料の生産に取り組む(Power-to-Liquid)。その際「P2X」はその付加価値連鎖の中で特にCO2を原料として利用する。その他「Carbon2Chem」プロジェクトでは、製鉄の際に発生する気候に有害な排気ガスを原料として利用するプロセスを開発する。最終的には、肥料、プラスチックおよび燃料の前駆物質を製品として生産する。それに添加する水素が必要であるため、プロジェクトコンソーシアムでは電解装置を稼働させる。
以上がBMBFのPower-to-X-技術助成策の二つの例である。

[DW編集局]