[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2020/09/30
抄訳記事公開日:
2020/12/03

新欧州研究圏(ERA):グリーン移行・デジタル移行・EU復興を支援する新規計画

A new European Research Area: Commission sets new plan to support green and digital transition and EU recovery

本文:

2020年9月30日付欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり。

ECはこのほど、研究・イノベーションのための新欧州研究圏(ERA)に関する政策文書を採択した。卓越性、競争力、オープン性、人材主導に基づいて、新ERAは、欧州の研究・イノベーションの状況を改善し、気候中立とデジタル主導に向けたEUの移行を加速し、コロナウイルス危機の社会的・経済的影響からの復興を支援し、将来の危機に対する回復力を強化する。

ECは、研究・イノベーションへの投資と改革を優先し、EU全体の研究者の卓越性へのアクセスを改善し、研究成果を市場と実体経済に届けることを可能にするべく、加盟国と緊密に協力して実施すべき戦略的目標と施策を設定した。さらに、今回の政策文書により、EU内での研究者の流動性、スキルとキャリア開発の機会、ジェンダー平等のほか、論文審査を受けた公的資金による研究へのより適切なアクセスをさらに促進する。

● 新ERAの戦略目標

1) 欧州の復興を支援し、競争力を強化すべく、グリーン移行とデジタル移行に向けた研究・イノベーションへの投資と改革を優先する

研究・イノベーションに対するEUの支援は、Horizon Europe、結束政策(Cohesion Policy)、次世代EUなどのさまざまなプログラムを通じて予見されている。必要とされる前向きな変化をもたらし、結果の質を確保するためには、EUの支援は加盟国と民間部門からの投資によって補完される必要がある。今回の文書では、GDPの3%がEUの研究開発に投資されるという目標を再確認し、2030年までに共同研究開発プログラムおよび欧州パートナーシップに対する国レベルの公的資金支援の目標値を5%に設定することにより、加盟国間のさらなる協力と国レベルの取り組み調整を促している。

最高のアイデアを持った最高の研究者が資金支援を得ることができるという卓越性の原則は、今なお欧州研究圏におけるすべての投資の基礎である。

2) EU全体の研究者のために優れた施設やインフラへのアクセスを改善する

加盟国の研究・イノベーションへの投資は不均一なままであり、橋渡しが必要な科学的卓越性とイノベーションの成果との間のギャップにつながっている。EUは、現場での必要に応じた支援を含め、すでに遅れている国を支援しており、Horizon Europe は、卓越性へのアクセスを改善するべく、経験豊富なカウンターパートとの協調を強化することで、さらに確実な支援を行う。ECは、研究・イノベーション投資が対GDP比でEUの平均に遅れをとっている加盟国に対して、今後5年間で投資を50%増やす努力を指向するよう提案している。

上記目的のために、研究者が卓越性にアクセスし、経験を拡大するためのモビリティの機会が、産業界と学界の間の専用の教育・モビリティ制度を通じて創出される。卓越性に基づく研究への進歩を反映するために、引用数の多い発表論文でEU平均に遅れをとっている加盟国は、今後5年間でEU平均とのギャップを少なくとも3分の1縮める必要がある。

3) 成果を経済界に移転して、企業投資および研究成果の市場への取り込みを促進し、グローバルな技術環境におけるEUの競争力とリーダーシップを育成する

研究成果の実体経済への移転を加速し、新しい産業戦略の実施を支援する観点から、ECは、主要な国際プロジェクトに対するより多くの民間投資の投入を可能にする産業界との共通技術計画の策定を奨励・指導する。これにより、主要な戦略領域での競争力のある技術開発が促進されると同時に、グローバルな場での欧州の存在感が高まる。

並行して、詳細なモニタリング実施の後、ECは、2022年までに協調とベストプラクティス交換を促進するべく、卓越した研究拠点(centres of excellence)やデジタル・イノベーション・ハブなどの既存の組織と能力に基づいて構築されるネットワーキング・フレームワークの展開の可能性を探る。まだ始まって2年間のフレームワークの中で、ECは、効果的かつ妥当な知的財産権保護の利用を確保するべく、イノベーションが正当に評価され正当な報酬を受けることを保証する指針となる原則のほか、知的財産のスマートな使用のための実践規範を更新・策定する。

4) 加盟国間の協力を強化することにより、研究者の流動性と知識・技術の自由な流れを強化し、誰もが研究とその成果から利益を得ることができるようにする

EUは、欧州で最高レベルの研究者を引き寄せて保持するべく、キャリア開発の機会を改善するとともに、研究者が学術界の外でもキャリアを追求するように奨励することを目指す。この目的のために、2024年末までに、加盟国および研究機関と協力して、研究者のキャリアを支援する手段を提供する予定である。この支援手段は、次のような要素で構成される。主要なスキルおよびミスマッチを特定するための研究者能力枠組、産業界・学界全体での研究者の交流と移動を支援するモビリティ制度、Horizon Europe の下での的を絞った教育・専門能力開発の機会、人々がより容易に情報を見つけて学習とキャリアの管理をするためのワンストップショップ・ポータル、などである。

[DW編集局]