[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2020/11/25
抄訳記事公開日:
2021/01/07

欧州委員会がEU経済の強靱性・復興の強化を目的とした知的財産行動計画を採択

Commission adopts Action Plan on Intellectual Property to strengthen EU's economic resilience and recovery

本文:

2020年11月25日付欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり。

欧州委員会はこのほど、企業、特に中小企業(SME)が発明や創造物を最大限に活用し、経済や社会に利益をもたらすことを確保するために、知的財産に関する新規行動計画を発表した。

知的財産(IP)は、企業の無形資産評価に役立ち、経済成長の重要な推進力である。標記行動計画は、欧州の創造的・革新的な産業界がグローバルリーダーであり続けることを可能にし、欧州のグリーン移行・デジタル移行を加速させることを目的としている。行動計画では、特に、IPの保護を改善すること、中小企業による知財の取り込みを促進すること、IPの共有を促進して産業界での技術的取り込みを増やすこと、偽造に対処し知的財産権の行使を改善すること、グローバルで公平な競争の場を推進すること、に対する重要な措置を定めている。コロナウイルスの危機は、重要なイノベーション・技術への特定の依存関係も浮き彫りにしたため、行動計画では、危機時に重要なIPを利用できるようにしながら、これらの課題に対処する。

ブランド、デザイン、特許、データなどの無形資産は、今日の知識経済においてますます重要になっている。IP集約型産業はGDP全体の45%、EU輸出全体の93%を占めているが、IPの付加価値は欧州のほとんどの産業エコシステムで成長している。無形資産が技術的リーダーシップを求める世界的な競争においてますます重要な役割を果たしているため、世界的に知的財産権の申請が増加している。行動計画は、欧州の知的財産枠組の強みに基づいて構築されており、主要な経済分野における景気回復と回復力を確実に支援するものである。

今回の行動計画は、次の5つの主要領域における方策を発表している。

● 知的財産保護の改善策

行動計画は、一連の既存IPツールをグレードアップし、それらをデジタル時代に適合させることを提案している。これには、特許取得済みの薬用・植物保護製品の補充的保護証明書(SPC)の改善、EUデザイン保護の最新化が含まれる。行動計画は、EUレベルでの非農産物の地理的表示(GI)保護制度の実現可能性を考慮しながら、農業の GI 保護の強化を狙う。欧州委員会はまた、IP制度に対する新技術(AIやブロックチェーンなど)の影響に対処するべく産業界との対話を開始する。企業が高速・効果的かつ手頃な価格の保護ツールにアクセスできるようにし、現在の制度で持続する断片化と複雑さを軽減するべく、行動計画では加盟国に(EU全体での特許の保護・施行による)単一特許制度の迅速な展開を呼びかける。

● 中小企業(SME)による知的財産取り込みの促進

欧州のイノベーターやクリエーター、特にSMEは、IPを事業戦略に取り込むことのメリットを認識していないことが多い。例えば、IP保護を申請しているのは中小企業では9%のみである。中小企業が無形資産を活用できるように、欧州委員会は情報提供と助言の改善措置を提案する。これは、コロナウイルスの影響を受けた中小企業が、欧州連合知的財産庁(EUIPO)基金から最初の1年間に2,000万ユーロが提供される新たな資金支援制度を通じて、IPポートフォリオをより適切に管理・活用するのに役立つ。欧州委員会はまた、EUが資金支援する研究・イノベーションプログラムのすべての参加者がIPに関する助言や支援を利用できるようにし、すべての関係機関と協力して研究・イノベーション界全体の知的財産権の価値を向上させる。これはまた、金融へのアクセスの手段としてIPの活用を容易にする役割も果たす。

● 知的財産共有の促進

行動計画は無形資産の保護を目的としているが、経済と社会を左右する重要な無形資産へのアクセスの改善も目指している。欧州委員会は、進行中のコロナウイルスのパンデミックなど、保健上の緊急事態に対処する上でIP制度が果たす重要な役割を認識し、投資収益率を確保しながら、危機時に重要なIPの共有を促進するための方策を提案する。欧州委員会はまた、著作権インフラの改善に取り組み、IPで保護されたデータをより適切に動員するための措置を講じる。また、コネクテッドカー(ネット接続の自動運転車)やその他のIoT製品の展開など、欧州の産業界のデジタル変革にとって重要な要素である標準必須特許(SEP)のライセンス供与における透明性と予測可能性を向上させる方法も提案する。

● 偽造対策および知的財産権行使の改善策

偽造品や海賊版の輸入はEUのGDPの6.8%に相当する。欧州委員会は、知的財産権の効果的かつバランスの取れた執行に向けて改善を図る。例えば、今後のデジタルサービス法一括提案を補完するものとして、知的財産権の所有者、仲介業者(オンライン市場など)、および法執行機関の間の効果的な協力の円滑化を促進し、ベストプラクティスおよび適切なツール・新技術の活用を流れに取り込むべく、EU偽造防止ツールボックスを確立する。

● グローバルで公平な競争の場を促進

知的財産権を多用する産業界がEUの商品輸出の93%を占めているが、EU企業は、第三国で事業を行う際に依然として大きな課題に直面している。これらの課題に対処するために、欧州委員会は、知的財産の世界的な標準設定者としてのEUの立場の強化を目指している。また、産業スパイや研究開発協力の文脈でのIPの不正使用の試みなど、第三国のプレーヤーが犯した不公正な慣行に対するEUの対応を強化する。

[DW編集局]