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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
- 元記事公開日:
- 2020/11/18
- 抄訳記事公開日:
- 2021/01/21
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グリーン産業革命のための10項目の計画
- 本文:
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2020年11月18日付ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)による発表の標記ポリシー・ペーパーの概要は以下のとおり。
世界が我々の生命、生活、経済に対するコロナウイルスによる影響から立ち直りつつあるように見える時に、我々はより良く復興できるチャンスがある。それは、英国がグリーン技術の世界的リーダーになるべく投資することである。
標記計画は、次の領域で目標を高めることに焦点を当てている。
● 洋上風力発電の推進
洋上風力発電は、成長する経済にとって重要な再生可能エネルギー源であり、英国はすでに世界をリードしている。2030年までに、現在の家庭電力消費総量を超える電力を発電するために、洋上風力発電の発電量を4倍にすることを計画している。また、実証済みの技術を最大限に活用するための新しいイノベーションを支援し、港や沿岸地域に新しい雇用と成長をもたらすための投資を行う。
● 低炭素水素の成長促進
水素は、宇宙で最も軽く、最も単純で、最も豊富な化学元素である。それは我々の家庭、輸送、産業にクリーンな燃料と熱源を提供することができる。英国にはすでに世界をリードする電解槽企業があり、比類のない炭素回収・貯留サイトはまだ最大化の余地がある。英国は産業界と協力して、2030年までに5GWの低炭素水素生産能力を目指している。再生可能エネルギー、CCUS(炭素回収・利用・貯蔵)、水素が集まるハブは、英国産業界の「スーパープレイス」を技術開発の最前線に位置づける。英国はまた水素ヒーティング試験の先駆者でもあり、「グリーン水素隣傍利用」(Hydrogen Neighbourhood)から始まり、10年内に「グリーン水素タウン」(Hydrogen Town)といえる規模にスケールアップする。
● 新しく先進的な原子力発電の提供
英国の電力システムは成長し、熱や輸送などの分野での低炭素電力の需要が高まるにつれて、2050年までに2倍の規模になる可能性がある。原子力は、信頼できる低炭素電力を提供する。英国は大規模な原子力を追求する一方で、小型モジュラー原子炉と先進モジュラー原子炉へのさらなる投資を通じて、英国の原子力発電の将来にも目を向けている。
● ゼロエミッション車への移行加速
ゼロエミッション車は、雇用創出、英国の産業強化、排出量削減、移動の継続を同時に進める我々の能力の、最も解り易い具体例となり得る。2030年から、予定より10年早く、ガソリンとディーゼルによる車とバンの新規販売を終了する。ただし、2035年までは、テールパイプから炭素を出さずに充分距離走行できるハイブリッド車やバンの販売は許可する。付随する28億ポンドの支援パッケージは、ミッドランド西部、ウェールズ、北部の英国産業のバックボーンとしての英国自動車製造業に対する我々の継続的な信頼を示しており、温室効果ガスの排出量を削減し、我々が呼吸する空気を改善すると同時に、雇用と投資を英国に取り戻すものである。
● グリーン(環境に配慮した)公共交通機関、サイクリング、ウォーキング
自家用車の脱炭素化だけでなく、公共交通機関、サイクリング、ウォーキングによる移動の割合を増やす必要がある。それ故、我々は、鉄道やバスのサービスに投資し、歩行者やサイクリストを支援するための対策に投資することで、よりアクティブで持続可能な輸送への移行を加速する。英国は何千台ものゼロエミッションバスを資金支援し、英国の町や都市にオランダ流の自転車専用道路を提供する。これにより、我々が呼吸する空気が改善され、心身の健康が増進され、排出量が削減される。
● 「ジェット・ゼロ」とグリーン船舶
英国を航空および海事技術の最前線に位置付け、低炭素移動を推進し、英国の強みを強化する。持続可能な航空燃料の普及を促進するための迅速な措置、ゼロエミッション航空機を開発するための研究開発への投資、空港や港での未来型基盤構造の開発により、英国をグリーン船舶とグリーン航空機の本拠地にする。国際的には、COP議長国の立場を活用してセクター主導の目標を策定するなど、世界の航空および海上のエミッションの解決策を見つける取り組みを引き続き主導していく。
● より環境に優しい建物
英国の家庭、職場、学校、病院をグリーン経済回復の中心に置き、5万人の雇用を支援し、英国に新しいサプライチェーンと工場を築く。建物のエネルギー効率を高め、化石燃料暖房から離脱することで、経費を低く抑えながら、人々の家を暖かく快適にすることができる。個人が機器を交換し、より低炭素でより効率的な代替品が提供されるにつれて、今後15年間で、人々が機器交換して化石燃料暖房から徐々に離れ,低酸素で効率的な代替え方法を使うようになるという、些細な行動変容からの明確な道筋を提示する。
● 炭素回収、利用、貯蔵への投資
炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)は、炭素を排出し続けながらも回収する事により、第一次産業革命発祥の地を活性化するという刺激的な新産業になる。英国の目標は、2030年までに年間1,000万トンの二酸化炭素を回収することである。これは、400万台の車の年間排出量に相当する。最大10億ポンドを投資して、4つの産業クラスターでのCCUSの設立を支援し、北東部、ハンバー、北西部、スコットランド、ウェールズなどの地域に「スーパープレイス」を創設する。2021年には、プロジェクトを支援するための新しいビジネスモデルを介して、民間部門の産業用炭素回収プロジェクトや水素プロジェクトへの投資をもたらす収益メカニズムの詳細を発表する。
● 自然環境の保護
自然環境は、炭素を長期的に捕捉して隔離するために最も重要で効果的な解決策の1つである。グリーン雇用を創出しながら、生物多様性の損失に対処し、気候変動に適応するべく、大切な景観を保護し、野生生物の生息地を回復する。
● グリーンな資金支援とイノベーション
イノベーションを引き起こし、新しい資金源を開発することは、ネットゼロのためのグリーン技術をさらに発展させるための基本である。英国政府は、2027年までに総研究開発費をGDPの2.4%に引き上げることを約束し、2020年7月に英国の研究開発ロードマップを発表した。グリーン・イノベーションの次の段階は、ネットゼロ移行のコストを削減し、より良い製品と新しいビジネスモデルの開発を促進し、消費者行動に影響を与えるのに役立つ。
グリーン政策と並行して、研究開発向け公的投資の記録的増強や、高リスク・高収益事業を実施する科学者に基金提供する新機構が、ネットゼロへの取組み行程を飛躍的に変える可能性がある。上記10項目の計画では、120億ポンドの政府投資、場合によっては民間部門からの3倍の投資を動員して、最大25万人のグリーン雇用を創出・支援する。
[DW編集局]