[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国立衛生研究所(NIH)
元記事公開日:
2020/12/10
抄訳記事公開日:
2021/02/03

NIH の「All of Us 研究プログラム」が研究参加者の遺伝子分析結果の返却を開始

NIH’s All of Us Research Program returns first genetic results to participants

本文:

2020年12月10日付の国立衛生研究所(NIH)による標記発表の概要は以下のとおりである。

NIH の All of Us 研究プログラムは、研究用にバイオサンプルを提供した参加者に遺伝子分析結果の返却を開始した。これは、研究ボランティアに情報を提供するというプログラムの優先事項を反映したものである。最初に、参加者は自分の遺伝的祖先と形質に関する情報を受け取ることを選択することができ、健康関連の結果は後日入手可能になる。

All of Us 研究プログラムは、遺伝、環境、ライフスタイルといった要因と健康との関係についての研究を支援するべく、全米の100万人以上の参加パートナーからなる多様なコミュニティ構築に取り組んでいる。参加者は、調査、電子健康記録、バイオサンプル(血液、尿、唾液)など、さまざまな方法で情報を提供する。データから個人情報識別子が削除され、All of Us 研究拠点を通じて研究での利用が可能になる。

このプログラムは、その理念の一部として、参加者が自分の情報にアクセスできるようにすることを約束しており、多くの参加者は、自分のDNA情報からどのようなことが分かるか知りたいと強く希望している。

プログラムの詳細な遺伝子解析には、全ゲノム解析とジェノタイピング(遺伝子型判定)の両方が含まれる。全ゲノム解析は、ヒトゲノムの30億を超える塩基対に焦点を当てているが、ジェノタイピングは、人々の最も一般的な遺伝的差異に焦点を当てた数百万の遺伝的変異を調べている。

遺伝情報を返すために、本プログラムは厳格なインフォームド・コンセント・プロセスを展開し、参加者に結果を受け取るかどうか、そしてどの結果を取り戻したいかについての情報と選択肢を提供する。本プログラムはまた、参加者とその医療提供者からの質問に答えるべく遺伝カウンセラーへのアクセスを提供する。

All of Us は助成対象機関間のネットワークによるチームを編成して本取り組みを推進している。医療技術企業 Color 社などが遺伝的祖先と形質に関する個別の結果を返し、ベイラー医科大学、ブロード研究所、ワシントン大学のノースウエスト・ゲノミクスセンターなど主要なゲノムセンターおよび協力機関が遺伝子データを生成する。

All of Us は遺伝子に関する結果の返却に段階的なアプローチを取っており、時間の経過とともに追加の結果を提供する。本プログラムは約1年以内に、各参加者のDNAが特定の種類の医薬品に対する身体の反応にどのように影響するか(薬理遺伝学)の情報、および特定の疾患のリスクの増加に関連する遺伝的変異に関する情報を、米国臨床遺伝学会(American College of Medical Genetics and Genomics)のガイドラインに基づいて、参加者が受け取るオプションの提供を開始する予定である。参加者は、DNAサンプルが処理されると返却情報を受け取ることができるれることとなっており、全員がすぐに情報を受け取れるわけではない。

All of Us が2018年に全国で登録を開始して以来、27万人以上がバイオサンプルを提供しているが、その80%以上は生物医学研究で歴史的に過小評価されているコミュニティから提供されている。これらには、人種的・民族的マイノリティ、性的マイノリティ、その他のグループが含まれる。

All of Us では、参加者の情報を保護するための厳格なプライバシーとセキュリティの保護措置を講じて、約1年以内に研究者が遺伝子データを利用できるようにする予定である。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]