[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2021/03/16
抄訳記事公開日:
2021/05/17

気候変動研究は、気候変動の最悪な結果への準備と回避に焦点を移すべき

U.S. Global Change Research Program Should Shift Focus to Preparing for and Avoiding Worst Potential Consequences of Climate Change, Says New Report

本文:

2021年3月16日全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)は、新しい報告書「地球変動研究のニーズと機会 2022-2031(Global Change Research Needs and Opportunities for 2022-2031)」を発表した。その概要を以下に記す。

米国地球変動研究プログラム(USGCRP)は、次の10年間の戦略計画の作成にあたり、最も脆弱な人々を保護しながら、社会が気候変動の最悪の潜在的結果に対する備えや回避に役立つ知見を提供することに焦点を移すべきである。潜在的な結果を推定するために自然環境の変化を予測する従来の気候研究は、意思決定者が気候危機に対応する際のニーズを満たしていない。

新しい報告書では、USGCRPが、緊急の現在および将来の気候リスクに対処するための方法についての理解を深めるために、人間と自然のシステム間の多角的な関係に関する研究を加速することを勧告している。たとえば、我々の食料の入手可能性は、炭素や水循環などの自然システムと、人口増加や農業慣行などの人間システムの側面との間の複雑な相互作用に依存している。

報告書は、USGCRPに対し、健康、食糧、エネルギー、水、経済など、米国民の安全保障と福祉に対する緊急の気候リスクに特に焦点を当てることを求めている。リスク管理は、最も脆弱なものを保護し、脆弱性の根本的な要因、特に不公平と排他性への対処を強調する必要がある。

適応と緩和:
報告書は、USGCRPに対し、緩和と適応を通じて緊急の気候脅威に対処する研究を優先するよう求めている。炭素排出量のネットゼロ達成や沿岸地域での強靭性の構築など、これらの活動の結果は複雑である。効果的で公正かつ包摂的な意思決定プロセスを促進する方法をより深く理解するために、相乗効果やトレードオフの管理を含む、新しい研究アプローチが必要である。

社会科学への重点強化:
社会科学研究への投資は、気候変動の社会経済的影響、ならびに気候変動の行動的、制度的、および政治的推進力をより適切に理解するために必要である。気候変動は、移民、世界の安全保障、サプライチェーン、ガバナンス、人々の健康、保険業界、および多くの社会問題に影響を及ぼす。報告書では、これらの結果は社会グループごとに異なる形で展開されると述べている。

分野横断的研究:
報告書は、USGCRPが気候変動リスクに対処するために、5つの横断的な分野の研究を拡大することを勧告している。5つの分野は次のとおり、(1) 極値、しきい値、および転換点、(2) 地方および地域への気候の影響のシミュレーション、(3) シナリオベースの気候予測と管理、(4) 公平性と社会正義、(5) 高度なデータと分析のフレームワーク。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]