[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ヘルムホルツ協会(HGF)
元記事公開日:
2021/04/28
抄訳記事公開日:
2021/05/31

ビッグデータを使って科学を変革する

Mit Big Data die Wissenschaft revolutionieren

本文:

2021年4月28日付のヘルムホルツ協会による標記発表の概要は以下のとおりである。

膨大な量のデータを評価するにはインテリジェントアルゴリズムと学際分野の専門家が必要である。ハンブルグの教育機関とのコンソーシアムとして設置されている「ハンブルグのデータ・サイエンス:物質の構造研究を目的とするヘルムホルツ大学院」(Data Science in Hamburg HELMHOLTZ Graduate School for the Structure of Matter: DASHH)では、次世代の教育を行なっている。この大学院により、ヘルムホルツ協会は、気候変動のような現代のグローバルな課題に対する解を見つけるために、データ・サイエンスを活用する基盤を構築する。

若い物理学者であるラルス・ダームマン(Lars Dammann)氏は、材料には微細な孔があることに着目し、この大学院で博士論文の課題とした。ナノ・スポンジには驚くべき特性があり、大きな孔のある薄膜よりも水が明らかに速く通過する。これは今日のフィルタシステムよりもはるかに大きな通過量である。

同氏は、「クリーンなエネルギーの生成と貯蔵の新しい可能性を期待させるもので、気候危機の緩和に役立つかもしれない。さらにナノポーラス材料は、排水処理や海水の脱塩のためのフィルタとしても使用することができ、水不足という緊急性を増す問題の解決に役立つ可能性がある」と語った。

ナノポーラス材料の研究を進めるためには、大量のデータを取り扱わなければならない。高解像度X線実験からのデータを評価する一方で、複雑なコンピュータ・シミュレーションにより微視的事象の再現を試みており、研究では人工知能(AI)の手法を使っている。同氏は、「博士論文では、これらデータ分析とコンピュータ・シミュレーションの両方をより強力にするために、両方を組み合わる。しかし、これには自己学習アルゴリズムなどの新しいコンピュータプロセスが必要となる」と述べた。

ハングルグ市科学省の科学研究局長であるロルフ・グレーベ(Rolf Greve)氏は、「従来の方法では膨大な量のデータを評価することが、ますます困難になってきている。評価には、AIとか機械学習(ML)のような革新的で新しいデータ・サイエンスの手法が必要である」と語った。このような新しいプログラムは、実験中のデータの評価、またはデータセット中の隠れたパターンを検索することができる。

ドイツ電子シンクロトロン(DESY)の指導的科学者であり、DASHHの広報担当でもあるニーナ・ローリンガー(Nina Rohringer)氏は、「これらの様々な分野では、同じような方法が使われており、素粒子研究ですでに証明済のソフトウエアプロセスは、構造生物学または宇宙物理学でも役立つ可能性がある」と述べた。

ロルフ・グレーベ氏は、「若い才能の育成という観点から、特に学際的な研究センターをサポートするDASHHは重要なプラットフォームである。自動車の軽量化や効率的なバッテリーの開発などは、強力なデジタル・ツールや、様々な分野の専門家の間の緊密な連携によってのみ成し遂げることができる。そしてDASHHはこれらのデータ・サイエンスの専門家を育成する」と語った。

ニーナ・ローリンガー氏は、「私の夢は、コンピュータ・シミュレーションと実験とを密に結合させて、シミュレーションにより実験中の測定データを可視化することである。それによって難解な特性を持つナノポーラスをより深く理解することができる。これは、将来的に、より効率的な水フィルタや、革新的なエネルギー生成方法のための基盤となる可能性がある。このようにして、データ・サイエンスは、水不足や気候変動のような問題を能動的に克服するための前提条件を形成する」と述べた。

[DW編集局]