[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ連邦教育研究省(BMBF)
元記事公開日:
2021/07/01
抄訳記事公開日:
2021/08/25

ジュリア・レグネリー氏が語る:「北極は気候変動のホットスポットである」

Julia Regnery im Interview: "Die Arktis ist der Hotspot des Klimawandels"

本文:

2021年7月1日付ドイツ連邦教育研究省(BMBF)のMOSAiC北極探査ミッションに関する報道発表の概要は以下のとおりである。
ジュリア・レグネリー氏は、研究砕氷船「ポーラーシュテルン」に乗船し、史上最大の北極探査に、科学コーディネータとして参加した。このインタビューでは、生物地球化学者として同ミッションで得られた知見と非常に特別な出会いについて語った。
同氏は2019年9月から2020年10月までの1年間、ドイツの大規模な研究砕氷船に乗って、北極の氷の中で過ごした。

今わかっていることは何か?そして今までにわからなかったことは何か?については、氷の流れが予想よりもはるかに速かったことがわかった。126年前のフリチョフ・ナンセン(Fridtjof Nansen)氏よりも速く中央北極を漂流したことになる。これは北極の氷が面積・体積の両方で明らかに減少したことを示している。海はますます熱を吸収し、夏の終わりに海水が冷えるのがより遅くなることで、流氷の形成は遅くなり小さなままで成長しない。これらの小さな流氷は風や天候の影響を受けやすく、トランスポーラードリフトにより北極上をより速く漂流することになる。

MOSAiCの前には、冬の間の北極の生態系に関するデータは殆どなかったが、巨大なデータセットと我々が持ち帰ってきた何千ものサンプルを完全に評価することで、今後さらに多くの知見が得られるであろう。
北極探査が気候研究にとって非常に重要である理由は、北極は気候変動のホットスポットであり、世界で最も温暖化された地域であり、なぜそうなるのか、その非常な温暖化が北半球の気候にどのように影響するかを知るためである。
北極の周りには、ジェット気流と呼ばれる空気の流れが循環しており、ジェット気流は北極の温暖化によって「膨らみ」が生じている。 一方で、これらは北極圏に非常に暖かい空気を送り込んでいる。また北極からの冷たい空気の流入により、北ヨーロッパの緯度で極端に寒い時期があった。こうして北極の気候変動のヨーロッパの天候への影響は大きい。

MOSAiCの成果により気象予測の精度が向上したことで、政治家は地球温暖化に対して行動を起こし、厳しく対処することが可能となり、社会は改善された気象予測の恩恵を受けることになる。
予測モデルでは、非常に複雑な気候システムを記述するために、膨大な仮定と単純化に依存している。MOSAiCの結果を適用することで、これらの前提条件の多くを年間のを通して実測値に置き換えることができる。一例として、MOSAiCによる雪の観察データを気候モデルで使用することで、モデル内の雪をより可変的で現実的な方法で描き、それによって大気と海洋の間のエネルギー交換を、より現実的に地域的および季節的に反映させることができる。

個人的に最も重要な発見については、海氷がぼろぼろになっていることに深く心を乱したことである。北極圏にこんなに深くそして速く入り込むことができるとは予想外であった。

[DW編集局]