2021年7月16日付欧州委員会（EC）の標記発表の概要は以下のとおり。

欧州委員会（EC）は、各国の欧州研究圏（ERA）政策の実施支援を目的として、「欧州における研究・イノベーション協定」に関する理事会勧告案を採択した。

本協定案は、ERAを支援する共同行動の共通優先領域を定義し、投資と改革の目標を示し、ERAプラットフォームを通じたEUおよび加盟国レベルでの簡素化された政策調整・監視プロセスの基盤を構成する。これにより、加盟各国は、改革と投資のアプローチを共有して、ベストプラクティスの交換を強化することができる。

以下、研究・イノベーション協定で加盟各国に推奨されている事項を示す。

● 研究・イノベーションの価値と原則

下記のように、EUにおける研究・イノベーションの共通の価値観と原則に同意し、関係機関と緊密に協力して、これらを各国内の研究・イノベーションシステムに適用する。これらの価値観と原則はまた、公平な競争の場と共通の枠組み条件を達成するために、第三国との相互関係において、加盟国とEUによって促進されるべきである。

・価値観を守る

a) 研究・イノベーションの倫理とインテグリティ
b) 科学研究の自由
c) ジェンダー平等と機会均等

・研究の向上を図る

d) 自由な流通（人、知識、技術の）
e) 卓越性の追求
f) 価値の創造

・共同研究

g) 統括、一貫性、責任ある参加
h) グローバル・アウトリーチ活動
i) 包摂性
j) 社会的責任

● 共同行動の優先領域

ERAを支援する共同行動向けの次の優先領域に合意し、それに基づいて、ECと加盟国の間で、ERA政策アジェンダの行動が策定、合意される。これらの行動は、今回の勧告で言及されているように、EUにおける研究・イノベーションのための、一般的に合意された価値観と原則との緊密な連携と適切な支援を確保するものである。

・真に機能する知識の域内市場を深化させる

a) オープンサイエンス
b) 研究インフラ
c) ジェンダー平等、機会均等、包摂性
d) 研究者のキャリアと流動性、および研究の評価・報酬システム
e) 知識の価値化
f) グローバルな取り組み

・グリーンとデジタルの両方の移行によってもたらされる課題に一体的に対処し、ERAへの社会の参加機会を増強する

g) 課題に基づくERA行動
ECと加盟国は、その地域、都市、地方自治体を含め、より緊密に協力して、研究・イノベーションに基づくソリューションを促進し、潜在的な脅威を軽減するために、より強靭で持続可能なセクター政策の策定と実施を推進する。
h) 研究・イノベーションの政策、教育、EUスキルアジェンダ間の相乗効果
i) イノベーション・エコシステムを後押しするための、研究・イノベーション政策と産業政策の間の相乗効果
j) あらゆる側面における市民と社会による研究・イノベーションへのより積極的な関与

・EU全体で卓越した研究・イノベーションへのアクセスを拡大

k) 研究・イノベーションのパフォーマンスが低い国、地域における投資と改革の強化
l) EU、各国、各地域のファンディングプログラム間の相乗効果

・協調した研究・イノベーション投資・改革の推進

n) 長期的な研究・イノベーション投資および政策改革を優先・確保するための支援
o) 研究・イノベーション投資の協調

● 投資と改革の優先化

・ERAの優先課題に対処する投資と改革を優先し、EUと各国の（現実的であるが野心的な）研究開発投資の自主的目標を設定することにより、国および地域レベルでのより強力な民間による研究・イノベーション投資に必要な環境と支援を提供する。
・研究開発への総支出をEUのGDPの3%に増やす（3%目標）、2030年までに公共部門の研究開発投資をEUのGDP比の1.25%に増やす等の方法で、EUレベルの研究開発投資を増やすという意図を確認する。
・各国は自主的に自国の投資目標を設定する。

● 政策調整

ERAの優先課題に向けた進展を確保するために、監視および調整メカニズムの強化を実施する。戦略計画・設計の段階から実装・監視の段階まで、以下の、よりシンプルで負担の少ない一連のポリシー・ツールおよびプロセスを通じて、EUレベルの調整と支援を行う。

・共通のERA政策アジェンダ
・専用のERA政策オンラインプラットフォーム
・ERAスコアボード
・加盟国とEC間の定期的な政策対話

[DW編集局]