[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ヘルムホルツ協会(HGF)
元記事公開日:
2021/07/23
抄訳記事公開日:
2021/09/22

アール渓谷の洪水に関する最初の法医学的災害調査報告

Jeder einzelne von uns braucht eine Risiko-Kompetenz

本文:

2021年7月23日付ヘルムホルツ協会(HGF)の標記報道発表の概要は以下のとおりである。
アール渓谷の大規模水害に関する「災害管理・リスク低減技術センター(CEDIM)」の研究者の最初の報告により、極端な事象からどのようにして自然災害が生じるかがわかる。共著者であるミヒャエル・クンツ氏(Michael Kunz)およびアンドレアス・シェーファー氏(Andreas Schäfer)にインタビューした。
シェーファー氏はアール渓谷の壊滅的な水害の研究を調整しているが、早い段階で深刻な大惨事が起きていることが明らかになったことから、様々な研究所の科学者から構成されている研究グループ全体を起動させた。CEDIMはカールスルーエ工科大学(KIT)の仮想研究所で、異なった分野の人々が協力していて、現在KITの10の異なる機関の研究者が参加している。必要に応じて、他の機関の研究者も参加する。
探求している重要なポイントについては、極端な事象からどのようにして自然災害が生じるかに焦点を当てて研究している。過去の法医学的な調査では、非常に単純なこと、たとえば曜日や時間帯などが災害の規模に影響していることがあった。
科学的な観点から現在の洪水についての特徴的なことについて述べると、様々な事象が同時に広い範囲で発生していることがある。そして激しい暴風雨の場合には広島型原爆の1,000倍を超えるエネルギー量となっている。
個々の事象と気候変動の関連性を立証することは常に困難だが、気候変動によって、このような極端な事象がより激しくなっていることは明確である。ドイツでは1881年以来平均気温は、約1.5ケルビン(絶対温度K)増加しており、それによって雲と降水形成のための水量が増加している、これが最初の要因である。
気候変動がなければ、アール水害は起こらなかったと言えるかについては、高性能コンピュータでモデル化することができるが、未だ行なわれていない。なお、気候変動がなければ河川氾濫の事象が起こらなかったとは決して言うことはできないであろう。
今回の水害の後、その結果についての議論が始まっているが、収集したデータが貢献できることがあるかについては、アール渓谷の洪水対策は1947年のデータに基づいており、1804年と1910年に起こった最近の歴史の中での最大の災害は考慮されていなかった。今後、地域の再建に際しては、今回の研究結果データと共に、これらのデータも考慮することが必要である。
アール水害の法医学的災害分析の次に行なうことについては、最初のレポートでは考慮されなかった側面(たとえば警告などのコミュニケーション)を引き続き調査を行う予定である。そして、ヘルムホルツ協会内のコンピテンスと様々な知見をさらに束ねるために、他の研究者との協力を試みることを考えている。

[DW編集局]