[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
フラウンホーファー協会(FhG)
元記事公開日:
2021/08/10
抄訳記事公開日:
2021/10/05

量子コンピューティングを活用した、がんの個別化治療

Mit Quantencomputing zur personalisierten Krebstherapie

本文:

2021年8月10日付フラウンホーファー協会(FhG)標記報道発表の概要は以下のとおりである。
がんに対して個別予見医療的な治療法の開発を目的として、ドイツがん研究センター(DKFZ)は、今後フラウンフォーファー・コンピテンス・ネットワーク量子コンピューティングのパートナーとして、エーニンゲンにある量子コンピュータを活用する考えである。これまでは、膨大な情報を、適切に処理する方法がなかったため、効率的に使用することができていなかった。
ハイデルベルクにあるDKFZは、量子コンピューティングを使ってこの分野の研究を進めたいと考えている。DKFZのトランスレ-ション免疫療部門の責任者で国立腫瘍疾患センターの上級医師でもあるニールス・ハラマ(Dr. Niels Halama)氏は、次のように述べている。
「免疫療法があまり効果的でない患者の新しい目標に絞った方法を見つけるために、量子コンピューティングを使って、異質なデータを体系的に処理し、使用する方法を探究したいと思っている。最終的にはどの患者がどの治療法から恩恵を受けることができるかという課題に対応できるようにしたい」。
シミュレータから現実にある量子コンピュータへ:
DKFZのチームは、すでに数学的基礎について研究しており、世界中で利用可能な他のシステムやシミュレータでの初期経験を積んできている。しかし完璧な量子ビットを備えたシミュレータで処理するのと、エーニンゲンのIBM Qシステム・ワンのような実際の量子コンピュータで処理するのとでは、大きな違いがあるとハラマ氏は述べている。特定の複雑さがある場合にどのように安定しているか、どこに落とし穴があるのか、何が可能か初めてわかってくる。

エーニンゲンのシステムでは、研究者達は、実用的な方法で、アイデアをさらに発展させ、実証したいと考えている。情報処理に適したアルゴリズムを見つけて、それを適用させ、必要に応じて開発するだけではなく、エラー修正を最適化する方法もみつけたいと思っている。

データ保護、スピードおよび柔軟性が重要な基準である:
ハラマ氏は、量子コンピュータを操作する際に、データ保護、スピードおよび柔軟性という3つのことを非常に重要視している。「エーニンゲン量子コンピュータがドイツのデータ保護法の下で作動し、データが現場に残ることは大きなプラスである」とハラマ氏は述べている。毎日が刻々と過ぎて行くがん患者にとっては迅速な意思決定が必要であるため、将来的に、従来のものより優れたものとなり得る量子コンピューティングの計算速度は、重要な基準の1つである。量子プロセッサーは、データを順番で処理するのではなく、並行して処理することができるので、大量のデータでも短時間で解析できる可能性がある」。

[DW編集局]