[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2021/10/06
抄訳記事公開日:
2021/11/16

ベンヤミン・リスト氏が不斉触媒の研究でノーベル化学賞を受賞

Benjamin List erhält den Nobelpreis für Chemie

本文:

2021年10月6日付マックスプランク協会(MPG)の標記報道発表の概要は以下のとおりである。
MPG石炭研究所所長のベンヤミン・リスト(Prof.Dr.Benjamin List)教授は、プリンストン大学のデヴィッドW.C.マクミラン(David W.C.MacMillan)教授と共に、2021年のノーベル化学賞を受賞する。不斉触媒の研究が評価されたもので、2人の研究者は、小さな有機分子でも化学反応を仲介することを発見した。これまでの科学では、酵素と、毒になることも多い重金属または高価で希少な貴金属だけが、化学反応を加速させ、望ましい方向へ導くことが出来ると思われていた。
さらに両氏が触媒として導入した小さな有機分子は不斉合成に適したものであった。2つのエナンチオマーのうち1つだけが生成され、これらの分子は、左手と右手のようなもので、すなわち空間的に一致しない分子である。これらの分子は、すべての生物学的プロセスに関与しており、医療薬剤としても重要な役割を果たしている。
多くの触媒では、両方の形態のキラル分子が等しく生成されるが、2つの変異体のうち1つだけが形成される不斉触媒を使って、両氏は、全く新しい可能性を切り拓いたのである。
2000年2人は、小さくしばしば安価で無毒な有機分子でも、1つの変異体に限定して化学反応を制御できることを、それぞれ独自に発見した。ベンヤミン・リスト氏は、後にHIV薬ダルナヴィルの生産に使用されたアミノ酸プロリンでこれを観察している。
2人のノーベル賞受賞者の発見が、新しい分野の扉を開いたのは、化学研究だけではなく、今日の化学・製薬産業でも、しばしば単純な化学物質の媒介に拠るところが大きいのである。
「MPGの科学者が、このわずか2年間に4つのノーベル賞を受賞したことはMPGの卓越したコンセプトを強く裏付けるものである。科学的自由の十分な大きさと、長期的に保証された人的・財務資源が科学の発展の基盤となっている。今日ドイツは科学の最盛期にいる」とマルティーン・シュトラートマン(Martin Stratmann)MPG会長は述べた。

[DW編集局]