[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国研究・イノベーション機構
元記事公開日:
2021/10/04
抄訳記事公開日:
2021/11/29

エネルギー研究プログラムの効果

Impact of the energy research programme

本文:

2021年10月4日付英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり。

工学・物理科学研究会議(EPSRC)は、Perspective Economics社に委託して、主にEPSRCが資金提供している助成金に関する回顧的研究を実施し、10月4日、「エネルギー研究プログラムのインパクト(Impact of the energy research programme)」と題する報告書を発行した。

エネルギー・プログラムは、複数の研究会議全体にわたるエネルギー研究に焦点を当てて、英国の学術研究者を対象としたファンディングを行うことを目的として、2004年に設置された。エネルギー・プログラムの包括的な使命は、質の高い研究と大学院教育を通じて、英国がエネルギー・環境目標と政策目標を達成できるようにすることである。本報告は、17件のエネルギー・プログラム助成金に対する第三者によるレビュー、およびプログラム全体に関するデータと文書の集計分析を含む、2部構成の調査による分析と調査結果を示している。

● 戦略的背景

2007年のエネルギー白書以降の英国政府の立法および政策の進展は、環境の持続可能性(ネットゼロ)、グリーン成長、産業戦略にわたり、英国の戦略的目標達成に必要な科学技術の進歩を実現するために、英国のエネルギー研究インフラ・ネットワークの責任がますます大きくなっている。
a)2050年に向けたnet zero達成、b)世界の多方面のエネルギー研究での英国の先導的位置付け、c)国内・国際的産業拡大を通じた経済成長賦活、等の為にEPSRCの助成は必須である。

● エネルギー研究の全体への投資

EPSRCは、2004年以降、84の研究機関の695人の主任研究者が主導する1,233件の研究助成を通じて、対象となる研究分野に11億ポンドを投資してきた。現在までに、EPSRCの助成金は、さまざまな学術団体、慈善団体、官民投資機関から約20億ポンドの追加ファンディングを確保している。
プログラムのポートフォリオは全国にバランスよく分散され、エネルギー研究と関連産業の特化が、levelling-up agendaを達成する為の機動力となっている。

● 研究成果と政策への影響

本プログラムの支援を受けた研究者は、約2万3,500件の研究成果を生み出し、特にエネルギー経済、持続可能性、エネルギー規制の観点から、1,000件を超える具体的な政策に影響をもたらした。
エネルギー・プログラムが、どのように、エネルギー問題理解に向けた多分野研究チームの新規取組みを支援し、エネルギー研究者が重要なエネルギー政策・戦略に関して影響を与え実践する事を支援したかを、課題に基づいた事例研究が証明している。

● 経済・産業効果

時の経過とともに、EPSRCエネルギー・プログラムの活動に関与する産業パートナーによる、英国の雇用と収益に占める割合が増えてきた。2005年、プロジェクトパートナーは、英国の収益で2,330億ポンドを生み出し、約110万人を雇用した。2018年までに、雇用数はほぼ2倍になり、英国の収益は約5,000億ポンドに増加した。EPSRCのファンディングは、研究分野全体での英国の新興企業やスピンアウトを支援する上でも重要な役割を果たしている。二次データの分析によると、2019年に本プログラムによって支援を受けたスピンアウト企業は2,890万ポンドの英国の収益を生み出し、180人を雇用したことを示している。2010年以降、これらのスピンアウト企業のうち13社が、合計4,930万ポンドの投資を確保している。

● 研究のスキルとネットワーク

この調査は、本プログラムがさまざまな方法で研究のスキルとネットワークの進歩に貢献したことを浮き彫りにしている。

本プログラムは、博士課程トレーニングセンターとフェローシップへの助成金を通じて、特定のトレーニングとスキル開発を目的とするプロジェクトに約1,300万ポンドを直接投資した。また。英国の大学間、および英国の大学と他のさまざまな学術機関・民間部門研究チームとの間で、国内外で800件を超える出向配置を支援した。

● 英国の国際的立ち位置

調査全般を通して、国際的基盤の上での、英国のエネルギー研究の非常に競争力のある特性が一貫して強調されている。

● 将来の需要
気候変動委員会は、net zero2050の拡大目標により新たな課題が生じ、エネルギー・プログラムの支援を受けている研究は、目標達成に向け共同する必要があると強調している。
アカデミア向けの調査では、脱EUに伴い、エネルギー研究で浮上する課題と、環境・産業・エネルギー安全保障面で生じうる便益に言及している。

[DW編集局]