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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2021/10/21
- 抄訳記事公開日:
- 2022/01/19
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Covid-19の重症度を予測するバイオマーカーの発見
- 本文:
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2021年10月21日付マックスプランク協会(MPG)による標記報道発表の概要は以下のとおりである。
バート・ナウハイムのマックスプランク心臓肺研究所が参加した国際的な研究チームの科学者たちは、肺上皮細胞の「フィットネス度(Fitness-Grad)」を示す遺伝子アイソフォームhFwe-Loseを同定した。将来的には、Covid-19感染後の患者が、重篤となる感染経過をたどるか否かの予測が可能となる。
コペンハーゲン大学のラヤン・ゴクナ氏(Rajan Gogna)率いる国際的な研究チームはバート・ナウハイムのマックスプランク心臓肺研究所の研究者と共に、Sars-CoV-2感染経過に関する予後判断を行なうためにバイオマーカーを使用する方法を模索してきた。
科学者たちは、Covid-19で死亡した患者の肺組織サンプルを分析した際に、探していたものを発見した。バート・ナウハイムのマックスプランク心臓肺研究所のトーマス・ブラウン部門の研究の筆頭著者であるポスドクのミヒャエル・イエケルチク氏は「Covid-19の非常に重篤な例では、遺伝子アイソフォームhFwe-Loseが高発現していることがわかった。これはいわゆるフィットネス遺伝子である。最適ではない状態の細胞は、この遺伝子の特定の発現形態の高い活性を示す」と述べた。再生プロセスの乱れが感染経過の重篤を促す:
イエケルチク氏は「肺が損傷している患者の細胞は、 hFwe-Loseを発現している細胞の割合が高い。多くの細胞がhFwe-Loseを発現し、従って最適に機能しなくなった場合、自然再生プロセスは機能しなくなる。感染の過程でこれらの細胞は直ちに死んでしまう。その結果、主に爆発的な炎症プロセスによって引き起こされる重度の肺損傷が発生する」と述べている。
多くの細胞がフィット(fit)していないために、自然な再生プロセスが乱された場合、Covid-19感染症の重篤な経過が生じる可能性が高い。このようにして、hFwe-Loseは肺の全体的なフィットネスのマーカーであるだけではなく、Covid-19の重症化リスクの増加も示している。
Covid-19感染症はどのくらいの重症化するのか?:
これまで研究者は感染の重症化の兆候を見つけるために、主に免疫系に焦点を当ててきた。しかしhFwe-Lose発現を確認することの利点は、このマーカーが患者が感染の過程で重篤化するか、あるいは感染により死亡するかを、より早い段階で感染の初期に兆候を示すことである。
高精度な予後診断:
イエケルチク氏は「 hFwe-Loseを用いることで、以前の他のバイオマーカーよりも、全体的に感染の経過をはるかに正確に予後診断することが可能となった。このマーカーを使うことで、人が感染する前にCovid-19疾病の経過についてコメントすることができる」と述べている。
予防接種を受けていない患者でも、バイオマーカーを使用して重症化が予測されれば適切な治療をすることができ、重症化を防ぐことができる。このようにして、死亡率を減らすことができる。 [DW編集局]