[本文]
-
- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)
- 元記事公開日:
- 2022/01/07
- 抄訳記事公開日:
- 2022/03/24
-
「バイオセラピーとバイオ製造」支援を加速へ
Investir dans la France 2030 : devenir un leader de la production de thérapies innovantes
- 本文:
-
2022年1月7日付高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)の標記発表の概要は以下のとおり。
政府は、「革新的なバイオセラピーとバイオ製造」を加速させる戦略を正式に始めた。加齢に関係するものも含めて、がんや慢性疾患など10種類のバイオ医薬品を開発し、将来的な医療体制を強化する。これは、2021年6月にマクロン大統領が発表した「医療イノベーション2030年計画」の目標のひとつであり、2021年10月の「2030年フランス投資計画」の発表においても言及されている。
マクロン大統領は特にバイオセラピーとバイオ製造の新規開発を支援するとともに、産業組織の展開を支援する目的で、8億ユーロを投資すると発表した。 これにより外国のバイオセラピーに過度に依存することなく、フランスがバイオセラピーとバイオ産業で国際的なリーダーになることを目指す。
医療産業界はバイオセラピーの台頭によって激動のさなかにある。市場規模は2019年時点で2,000億ユーロ近くあり、世界の医薬品市場の24.3%に相当するが、2025年までに年間8〜9%の成長を遂げ、3,200億ユーロに達すると予想されている。これらの新しい治療法は、経済的な問題にとどまらず、医療制度と公衆衛生を維持するうえで将来的に課題にもなる。最先端の研究領域であり、新規治療法の発見に向けて世界中から人材を引き寄せることになる。
バイオセラピーとバイオ製造に特化したこれらのリソースは、医バイオクラスター、インフラ、さらには産業講座を資金支援するための10億ユーロ)、医療機器の領域(5億ユーロ)などセクターの新興プレーヤに対するファンディング(約20億ユーロ)、欧州プロジェクトを通じた産業活動の横断的支援(15億ユーロ)、で補完される。
■ フランスの戦略
フランスは8億ユーロの予算で、2025年までにバイオセラピーやバイオ産業分野の雇用数を現在の2倍にし、10種類のバイオ医薬品を生産する、という野心的な目標を定めている。さらに2030年までに20種類のバイオ医薬品を生産し、バイオ技術でユニコーン企業1社と中堅企業5社を出現させる、としている。
世界的な競争を勝ち抜くには、「腫瘍学におけるバイオ技術。特に特定の白血病又はリンパ腫の悪性細胞を標的とするモノクローナル抗体やCAR-T細胞」「腫瘍学以外の遺伝子治療や細胞治療のイノベーション」「バイオリアクターなど、上記治療法の新たな生物学的生産システム」「バイオ製造の培養・処理システムのより効率化」――の4テーマを重視する必要がある。
こうした戦略と「医療イノベーション2030年計画」のファンディングにより、イノベーションの最前線企業を支援する。それにより、
「肝疾患の研究を加速し、細胞を肝細胞に再プログラムすることによる薬剤の毒性の低下」「動物部門向けの mRNA ワクチン・プラットフォームを開発」
「癌治療向けのモノクローナル抗体の生産」
「角膜移植に取って代わる細胞治療法や、神経変性疾患治療向けの細胞治療法の開発」
「将来の細胞治療や遺伝子治療の生産に必要な投資の削減」――といったことが可能となる。この戦略は、国立保健医学研究所(INSERM)と原子力・代替エネルギー庁(CEA)に共同で委託された8,000万ユーロの「優先研究プログラム」(PEPR)に基づくものである。INSERMとCEAは、CAR-T細胞、細胞外小胞、組織療法、新しい抗体、RNAなどの領域での科学的基盤の強化を目指してプログラムを主導する。
■公募「バイオセラピーのイノベーション」開始
さらに政府は、約3億ユーロを投じるプロジェクト公募「バイオセラピーのイノベーション」を開始すると発表。2023年11月23日まで応募を受け付けている。
また「新しいバイオセラピーと製造ツール」の募集に際して、2021年6月に事前に出された「関心表明公募」(AMI)では7件の新規プロジェクトが採択され、最初の支援対象企業がすでに3,900万ユーロの資金支援を受けている。 [DW編集局+JSTパリ事務所]