[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/01/18
抄訳記事公開日:
2022/03/28

高等教育:国境を越えたより深い協力を通じて、EUの大学の将来に備える

Higher education: making EU's universities ready for the future through deeper transnational cooperation

本文:

2022年1月18日付欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり。

今日、欧州社会はこれまで以上に大学や他の高等教育機関の貢献を必要としている。欧州は、気候変動、デジタル変革、人口の高齢化などの大きな課題に直面しているが、そんな時に世紀最大の世界的な保健危機とそれによる経済的衰退に見舞われている。持続可能でレジリエントな経済を形成し、EUをより環境に優しく、より包摂的で、よりデジタル化することにおいて、大学および高等教育セクター全体は、教育・研究・イノベーションの交点に位置するという独特の立場にある。

このほど採択された2件の新規イニシアチブ、「大学のための欧州戦略」と、「欧州の効果的な高等教育協力のための架け橋構築に向けた、理事会勧告に関する欧州委員会の提案」は、上記取り組みにおいて大学を支援する。

● 大学のための欧州戦略

欧州は、5,000近くの高等教育機関、1,750万人の高等教育学生、135万人の高等教育教育者、117万人の研究者を擁する。本戦略は、欧州のすべての大学が、変化する状況に適応し、繁栄し、欧州のレジリエンスと復興に貢献できるように支援することを目的とする。次の4つの目的の達成に向けて、欧州の大学を支援するための一連の重要な施策を提案する。

・欧州次元の高等教育・研究を強化する。
・大学を欧州の生活様式の灯台役(lighthouses)として統合し、学術・研究のキャリア、将来を見据えたスキルの質と妥当性、多様性、包摂性、民主的慣行、基本的権利、学術的価値に焦点を当てた施策を支援する。
・グリーン・デジタル両移行における変革の主要な担い手として大学を強化する。
・EUのグローバルな役割とリーダーシップの推進力として大学を強化する。

● 欧州の効果的な高等教育協力のための架け橋を築く

理事会勧告に関する欧州委員会の提案は、欧州の高等教育機関がより緊密に協力すると共に、国境を越えた共同教育プログラム・活動の実施、能力と資源のプール、共同学位の授与を促進することを目的としている。このような緊密で持続可能な国境を越えた協力、共同教育研究活動のより効果的な実施、そして欧州高等教育圏(ボローニャ)ツールを可能にするための行動を起こし、国家レベルで適切な環境を整備することが、加盟国への招請事項である。それによって知識の流れが促進され、教育界、研究界、革新的な産業界の間のより強力な連携が構築される。目標は、特に今日の経済的・社会的要求に応えるために、最も必要なスキルと能力に焦点を当てて、すべての人への質の高い生涯学習の機会の提供を支援することである。

● 実現に向けた4つの主要イニシアチブ

欧州次元の高等教育・研究は、2024年半ばまでに次の4つの主要イニシアチブによって後押しされる。

・2024年半ばまでに(現在41採択されている)欧州大学(European Universities)を60まで拡大し500を超える高等教育機関からなる規模とし、2021~2027年のエラスムス+の指標となる予算を総額11億ユーロとする。目的は、教育、研究、イノベーションに関する共通の長期的、構造的、持続可能かつ体系的な協力を展開・共有することで、欧州全土の学生、スタッフ、研究者がシームレスなモビリティを享受し、国や分野を超えて共同で新しい知識を生み出すことができる欧州の大学間キャンパスを創設することである。
・高等教育機関の提携に関する法制定に向けて取り組み、2022年の時点でエラスムス+パイロットを活用して、リソース、能力、長所をプールできるようにする。
・学生が取得する高等教育資格において国境を越えた経験の価値を認め、共同プログラムを実施する場合の官僚的形式主義を排除するべく、欧州共同学位に向けた取り組みを行う。
・2022年に域内を移動するすべての学生および2024年半ばまでに欧州の大学のすべての学生が利用できる独自の欧州学生IDを導入して、欧州学生カード・イニシアチブの規模を拡大し、すべてのレベルでのモビリティを促進する。

● 背景

欧州委員会は、2025年までの欧州教育圏達成に関する政策文書、および新欧州研究圏(ERA)に関する政策文書において、高等教育の変革アジェンダの共同策定を開始する意向を発表した。2020年12月1日に採択されたERAに関する理事会結論は、「ERA、欧州高等教育圏(EHEA)、欧州教育圏(EEA)の高等教育関連機関の間のより強力な相乗効果と相互接続が展開されるべきである」と強調している。理事会は、2021年2月26日の「EEAおよびそれ以降(2021-2030)に向けた教育・訓練における欧州協力のための戦略的枠組み」に関する決議において、高等教育変革アジェンダの確立を、高等教育優先領域における具体的施策として特定している。

2021年11月26日に採択されたERAの今後のガバナンスに関する理事会結論に付属するERA政策アジェンダは、高等教育機関が、ERAに沿って、EEAとの相乗効果の下に発展するために特化した施策など、大学に関連する施策を支援している。

[DW編集局]